私の夢は、「伝えること」だ。かなり漠然としている。一言に伝えると言っても、様々な手段がある。最もポピュラーなのは、言葉で伝える。あとは、言葉を使わなくても、例えば、表情や身振り手振りでも伝えることはできる。伝え方に特にこだわりはない。ただ、私は自分の身を持って何かを伝えることが好きということに最近気付いた。

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私が、かがみよかがみに初めてエッセイを投稿したのが、約1年前。自分がまさか、エッセイを投稿するなんて思ってもなかった。私は学生時代、国語が大の苦手だった。まず、どう勉強したら良いかわからない。理科や社会は暗記すればある程度はカバーできる。英語や数学は何度もこなして理解すればある程度カバーできる。じゃあ、国語は?定期テストならまだしも、模擬試験や入試となると、初見の文章が出て来る訳だ。五万とある書物の中から何が出題されるかもわからないし、どう対策したら良いかもわからない。

たまに、国語の文章問題は文章に全て答えが書いてあるから、簡単だと言う人もいるけれど、私は全く共感できない。そもそも自分は生粋の日本人であって、日常生活で何不自由なく日本語を使えているのに、なぜ、国語ができないのかすらわからなかった。その頃は、訳もわからず、ただひたすら問題集を解いて数をこなすことに必死だった。

けれど、今、振り返ると自分に欠けていたのは、おそらく、「言葉に触れる」機会だったと思う。読書にほとんど興味がなく、めったに本を読んでいなかったし、そもそも言葉そのものに興味がなくて、人と話すのも好きではなかった。

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大学時代、友人が、かがみよかがみにエッセイを投稿し、「良かったら、読んで見てね」と連絡をもらったことがあった。その時に、私は初めて、かがみよかがみの存在を知った。本来なら、「読んでみるね」とか、読んだ感想を送るのが自然な流れだと思うけれど、当時の私は、その友人に対する嫉妬心で「私も書いてみようかな」と返信した。

書くつもりもないくせに、何だか友人が一歩上を行っているかのようで悔しくて、思わず、そう送ってしまった。友人は、歓迎する内容のメッセージを送ってくれたけれど、自分がその時にエッセイを投稿することはなかった。

それから時が過ぎ、ある時、私は久しぶりに地元の図書館に足を運んだ。幼稚園や小学生の頃、よく母親と一緒に図書館に絵本や児童書を借りに行っていた。夏休み、暇で時間を持て余していたのだ。けれど、いつの間にか成長と共に行かなくなっていた。図書館に行くのは初めてではないけれど、児童書コーナーしかほぼ行ったことがなかったので、一般者向けのフロアに行くのは、なんだか新鮮で、自分が大人になったという成長を感じた。私は何か具体的な本を探しに行った訳ではなく、ただ何となく時間があるから、本でも読もうかなと言った具合だった。

実際、借りた本がめちゃめちゃ良いといった訳ではなかったけれど、不思議なもので、文章を読んでいると今度は自分が何か文章を書きたいという衝動に駆られた。けれど、私は学者でもないし、小説のようなストーリーも思い浮かばない。

そこで、とりあえず、最近、自分が外出して、その時に感じたことをポチポチとスマホのメモに打ち込んでみた。それが、後に、かがみよかがみの初エッセイとなった。

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初めは、ただちょっと文章を書く程度であって、それをどこかに投稿するつもりはなかった。けれど、せっかく書いたし、なんとなく頭の片隅にあったのか、かがみよかがみに吸い寄せられるように、恐る恐る投稿してみることにした。

初めは、少し怖かった。自分の拙い文章が世に出るなんて、いくら、ペンネームとはいえ、大丈夫だろうかと不安だった。当初は、不採用だろうと思っていたけれど、まさかの採用の連絡をいただいた時は、とても嬉しかった。編集部の方からコメントをいただけるのも嬉しくて、それ以来、私はちょこちょこエッセイを投稿することになった。そして、最近、私は国語辞典を購入した。まだまだ自分が知らない言葉が世にたくさんあって、ちょっと読むだけで勉強になる。このエッセイを書くにあたっても思わず辞書を引いた。

冒頭で述べた、私の夢である「伝えること」。かがみよかがみにエッセイを投稿することもその一つだ。もう既に夢が叶っていると言えば叶っている。けれど、エッセイに留まらず、色んなことを色んな形で伝えてみたい。それが、具体的に何なのかは自分でもわからないけれど、エッセイをきっかけに私は「伝えること」が好きだと気付いた。せっかくの気付きをこれからに活かしたい。

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最近、「伝えること」によって勇気付けられた場面があった。とあるテレビ番組のロケでアナウンサーと芸能人の方がテーマパークにロケに行き、アトラクションに乗車した。乗車後、アナウンサーの方が、アトラクションに登場するキャラクターの「いつまでも子どものままでいてね」といったフレーズに対し、「子どものままでいたい」と感涙しながら発言していた。その姿を見て、なんだか心が温かくなった。

私自身も心のどこかに「子どものままでいたい」という気持ちを抱えていて、それをアナウンサーの方がテレビを通じて発言されていることにより、なんだか背中を押されたような気持ちになった。もちろん、何を思っても良いのだけれど、自分の気持ちをなんだか肯定されたような不思議な体験だった。

アナウンサーになる訳ではないけれど、私もいつか、このアナウンサーのような立場になりたい。それが、大きなことではなくてほんのささいなことでも何かを伝えられたら光栄に思う。そして、今現在、かがみよかがみに投稿しているエッセイを通じて誰かに何かが伝わっていたら、嬉しく思う。