幼い結婚式から女優の夢まで。三度破れた私が探す「4つ目の夢」

私の歴代の夢はさまざまだ。
好奇心旺盛な私は、大小さまざまな夢を持ったが、中でも印象的な夢が3つある。
1番最初の夢は、はやとくんのお嫁さん。
先生に作ってもらったベールを被り、ピアニカの結婚行進曲をバックに幼稚園の階段から2人並んで降りる、結婚式ごっこをした。
幼稚園で1番モテていたはやとくんは、その簡易結婚式を、相手を変えて8回も繰り返す羽目になった。
8人の女たちと争うほどの気概はなかったため、最初の夢は破れた。
2つ目の夢は、小説家になること。
本の虫だった私は、学校の図書室や近所の図書館に入り浸っていた。
空想の世界に浸ったり、主人公の気持ちに思いを馳せたり、小説を読むことは自分をさまざまな場所へ連れて行ってくれた。
そのうち自分でも文章で表現してみたくなり、小学3年生の夏休みに初めての小説を執筆した。
親戚のお兄ちゃんに見せたところ、ハリーポッターと眠りの森の姫を足して2で割ったようだと評された。
初めての批評に憤慨して読み直したが、自分でも全く同じ感想を持った。
処女作がボツを食らったことにもめげず、トリックの甘い推理小説やら友人にリクエストを受けた恋愛小説やら、小説の執筆はちょっとしたブームになっていた。
ある日、15歳のハローワークを父に勧められ、まず最初に小説家の項目をチェックした。
そこには、「小説家は最初に目指すべき職業ではない」と書かれていた。
その職業に就くにはどうしたらいいかを指南してくれると思っていたのに、初手で否定されたことに衝撃を受けた。
読み進めてみると、医者やキャバ嬢から小説家になった人はたくさんいるが、その逆はまずいないということだった。
なるほど、と納得し、それじゃあ当の村上龍氏は何から作家になったのだろう?と調べてみたところ、彼は最初から作家だった。
そこで心が折れ、夢破れた。
3つ目の夢は、女優になること。
これはかなり長く持ち続けた夢だった。
小学5年生の頃から漠然と女優に憧れていて、演劇クラブにも所属した。
もともと空想が好きで変身願望のあった私は、演じることの楽しさにのめり込むようになった。
中学・高校も演劇部に所属し、高校卒業後の進路を決める時にも、演劇に関すること以外は考えられなかった。
演劇学科の有名な大学を目指すため、実技対策のワークショップに参加した。
そこで出会った参加者たちの熱量や圧倒的なオーラに触れた時、私の夢は破れていた。
既に夢が破れてしまっていることに自分でも薄々気がついていたが、後には引けなかった。
入学試験の書類は通ったものの、面接では言葉に詰まってしまった。
周りの学生に圧倒されてしまったあの日から、自分の夢に自信が持てなくなってしまっていたのだ。
私は本当に女優になりたいんだろうか?
演じることは好きだけれど、職業にできるんだろうか?
そんな不安が渦巻くようになり、面接でも用意していた言葉を話すことができなかった。
結局、大学は演劇とは関係のない美大に進学した。
進学した美大でも夢を手放しきれず、ずるずると演劇サークルに所属した。
やはり演じることや演劇をつくることはとても楽しかったが、それを職業にするレベルまで突き詰める勇気がなかった。
役者コースこそなかったものの、映画学科もある大学だったのだから、本気になれば役者の道もまだ拓けたかもしれない。
でも私はそれをしなかった。
こうして3つ目の夢も破れた。
4つ目の夢と言えるような目標は、まだ見つかっていない。
自分が何をしたいのか、今はまだわからない。
夢を持っていた時は、無条件にいつかそうなっている理想の自分の未来を思い描くことができたのに、今は未来の自分を上手く思い描けない。
何にでもなれる、このあまりにも大きな自由は私の手に余るみたいだ。
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