夢と目標の違いって難しいものだと思う。夢はキラキラしていて日々のエネルギーになるようなものだと信じていている。そんな私にとって部活動の大会や卒業後の進学先は目標だった。

それはどちらも同じ未来のことだけど夢と少しだけ違う、もっと具体的で細かく実行していくものだ。大会がいつあるのか、受験日までの日程、そんな決定された情報から目標までにやるべきことを細分化し実行していくそれは夢なんて言葉よりずっと現実的で、つまらないものだった。

もしも、その目標が例えば世界大会とかオリンピックとか、誰でも知っているようなトップレベルの進学先などそんな大きなものだったら夢と呼べるのだろうか。小さいころによく夢として語られた、将来なりたい職業が公務員ではなく芸能人なら胸を張れたのだろうか。

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私の持っていた夢と言えるような目標は、中学校の部活で目標にしていた全国大会の出場だった。それはたまたま入部した強豪でも何でもない公立の中学校で顧問の先生が言い始めたものだ。最初に聞いた時は全く興味がなかったし、当然、私を含めた部員たちに全国大会まで行けるような実力があるわけでもなかった。

それは私たち部員の意志ではなく、顧問の先生が勝手に言い始めて私たちに押し付けたものだった。関東大会の出場権獲得の目安となる基準タイムや直近の大会結果を知り、そして全国大会の夢を意識するうちに自分たちの実力も分かるしやはり全国大会なんて無理だということも分かってきた。

この夢は最初こそ押し付けられた勝手な夢だったものだし、誰も見向きもしない興味もない夢だった。それでも、その夢を練習ごとに考えるようになり、自分たちの実力が分かっていると自然と何が足りないのかも分かるようになった。足りないものが分かると少しずつでもその足りないものを練習してできるようになるための小さな目標ができた。

部員のなかで得意な先輩や同級生と協力して練習したり、お互いにダメだししあったりしてその小さな目標を実現していくうちに、自分の思い描く動きができたことを実感することが増えたり、大会の成績が良くなった。大会の成績という形で努力が身に見えるようになると部活動の練習も楽しかったし、顧問の先生に押し付けられた夢はいつの間にか私たち部員の目標になった。達成のための努力はしたがそれでも、最後の大会の成績は関東大会で負けてしまい私の部活動の夢はそこまでだった。

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夢と目標の違いは難しいのに、夢というと楽しそうで目標というと真面目な感じだ。だからこそ大人になると夢という言葉を使うことが難しくなる。

それは、自分の能力や技術から実現できる範囲が分かってくるからこその成長の結果だと思いたい。成長してしまった私たちは迂闊には夢を語れない。

でも、夢が目標になるように、日々の目標がいつの間にか追うのが楽しくなるような夢に変わって、夢を語ること、実現することを楽しめるような変化も訪れることがあると信じたい。