結婚まで考えた最愛の彼を失った私が見つけた、彼以上に大切なもの

コロナが流行し始めた年の春。彼とはマッチングアプリで出会った。私は21歳で、社会人2年目を迎えるところだった。周りは社内恋愛や、学生時代から付き合っている恋人と同棲を始めたりと、少し早いペースで次のステップへ進み始めていた。なのに私は酒の勢いで始まったセフレとなかなか縁を切れず、ずるずると関係を続けていたのだ。そんな自分に嫌気がさして、人生で初めてマッチングアプリを始めた。
マッチした彼は芸大に通う19歳で趣味や好きなものが似ていて、話が盛り上がった。そのままトントン拍子で話が進み、マッチしたその週末には下北沢でデートをした。話も合うし、何よりも緊張せずにお互い素で過ごせて一緒にいて心地よかった。そのまま流れで彼の家に行き、一夜限りの関係になるかと思ったが、翌日の朝に彼から告白され、超スピード交際が始まった。政府からコロナ禍での自宅待機が命じられたことにより、勢いで同棲もスタートした。
そのまま彼とは平和に同棲生活が続いていた。一度、気の迷いで私が浮気してしまったこともあった。彼は気づいていたかわからない。でも勘のいい彼だからきっと私の浮ついた心は見透かされていたと思う。なのに彼は何も言わずに私のことを変わらず愛してくれていた。
付き合って3年が経つ頃、彼が社会人になり、私は仕事を辞め今まで憧れていた海外での仕事に挑戦することにした。今まで毎日ずっと一緒にいたのに、私が海外に行きたいと相談したら彼は迷わずに背中を押してくれた。私が海外に行った後も関係は変わらず平和に続き、帰国後も一緒に暮らしていた。
だが、フリーターでのんびり暮らす私とは打って変わって、デザイナーとして夢を叶えた彼は毎日仕事に明け暮れていた。職場から帰ってくるのは毎日0時過ぎ、朝も早く職場へ行き、自宅には着替えを取りにくるだけになっていった。それでも私は彼を支えたいと思っていたし、このまま結婚するんだろうな、なんて考えていた。それなのに、彼は私の思いとは裏腹に、今は私との将来よりも仕事に集中したいと考えていた。彼と何度も結婚か別れるか話し合ったが、このまま結婚するのは違うのではとなり、彼とは破局した。
彼と別れてから、住む家を失い、将来への希望も、やりたいことも全てどうでも良くなっていった。田舎から母が迎えに来て半強制的に実家へ連れて帰られるくらい焦燥していた。家族同様に毎日一緒にいた彼が別れた途端に赤の他人になった。連絡を取らず、今どこで何しているかもわからず、人との別れがこんなにも辛いものだと初めて知った。胸が張り裂けるような気持ちってこういうことか、と冷静に考えていた。家族も友人もそんな私を元気づけようと毎日何かしら理由をつけて外に連れ出してくれた。周りの人たちの支えがあって、少しづつ回復していった。
私は結婚まで考えた最愛の彼を失ったが、彼以上に大切なものを改めて見つけることができた。彼と過ごした時間はとても大切で何にも変えられない宝物だと、時間が経った今なら言える。そしてもう彼の人生と私の人生は交わることはないかもしれないが、どこかで元気に、そして好きな仕事に全力で向き合って、幸せに過ごしてくれればいいなと思う。私は私で大切なものを守りながら、自分のことを全力で愛していこうと思う。
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