便利さに支配されてもなお、デジタルとアナログの二刀流で生きていく

7年前、転職を機にスマートフォンを使い始めたが当初は業務連絡ラインと電話をかける以外に用途はなかった。
何気なく画面を開いたあの日、飛び込んできた広告。
それは有名な切子メーカーの一口グラスだった。
透明な薄紅色の地にきらめく職人技のカット。
物欲のあまりない私がこの時は欲しいと思った。
一目ぼれというやつだろう。
値段は張ったが「在庫残り1」の文言に速攻で購入ボタンを押した。
なにせ初めてのネット購入だ。緊張しながら登録事項を入力して完了と出た時は汗をかいていた。2日後に届いたグラスは画像よりも更にきれいで愛らしくため息交じりに眺め暮らした。
それからはほかの切子製品を探す毎日。完全にはまった。
スマホは次から次へといろいろな提案やお誘いを掛けてくる。
様々なサイトを訪れてレアで魅力的な商品をより安く探し出すことが日課となった。
起床時に新着情報をチェック、昼休憩にもチェック、帰宅後は遅くまでネットサーフィン。
最初の切子グラスのみならずいろいろと雑貨を買い求め、更にはネット株取引まで始めた。
以前の私からは考えられない。
こんな小さなスマホ一丁でなんでもできるんだなあ。
感心する一方で眼精疲労と睡眠不足に。今日はもう使わないぞと思うもちょっと分からない言葉があればスマホ検索をする。
そうしたら答えと共に付随した情報がすぐにあがってくる。
それらの情報からまた別世界が開ける。
その繰り返しでだらだらと時間を消費して肩こり不眠が限界になってきたので、先日の休みは朝からスマホの電源を切って過ごしてみた。
掛け時計のコチコチ音や外ではスズメや鳩の鳴き声が聞こえ、気になった言葉は久しぶりに
国語辞典を開いてみた。
なんだか懐かしい気持ち。
私がスマホで時刻を見ていた時も掛け時計は動いていたはずだけど全く意識しなかった。
それにしても老眼のかすんだ目と乾いた指先で辞書の薄いページを繰ることの大変さよ。
そうしている間にも何かニュースはないかなとスマホに手を伸ばしてしまう。
全く息をするようにスマホを触っていたのだなあ。
この日、夕食後にとうとうスマホの電源を入れてしまった。
24時間オフには遠い、17時間程度のデジタルデトックス。
スマホが振動して画面が立ち上がった時、不思議な安心感があってもはやスマホは
生活の必需品だと痛感した。メールチェック、天気予報やニュースの斜め読みで30分ほどは軽く経過した。
スマホがあって当然の時代、それはこれからも変わらないだろう。
だからこそ上手にスマホと付き合っていきたい。
スマホを閉じて遠くの風景に眼を休めながら古い時代の良さに浸る時間も大切に。
掛け時計で時間を見ることや辞書を使うことは頭と手先の訓練だ。
デジタルとアナログの二刀流、良いとこ取りで楽しくやって行きたい。
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