小柄なプリンセスに憧れた私が開けた、唯一無二の女王様の扉

私は昔から、肩幅が広いのがコンプレックスだった。
大柄のため、可愛い服装が似合わず、少女時代は肩身の狭い思いをしていたものである。
「そんなの気にする必要はない」と言うのは簡単だけど、小学生の頃の苦い記憶が、私を縛り付けたのだ。
小学校に、ピンク色のワンピースを着ていったら男子から「似合ってないよ」と言われたのが、本当にショックだった。
「やっぱり小柄でも華奢でもない私が、こういう服を着たらいけないんだ」
そんな意識が強く根付き、それから私はボーイッシュな服ばかり着るようになる。
大人になれば、自分に似合う色も分かるし、メイクによって印象も変えられるが、子ども時代は素で勝負するしかない。だからこそ、一般的な女子の平均に比べて背が高く、ガッシリした体型の自分がフリフリの服を着ると、嫌でも浮いてしまうのだ。
また、私は髪質も真っ黒で太い。だからこそなおさら、淡い色が似合わないのだろう。
小学校の同級生で1番可愛い娘は、小柄だし、体も細い。肌も日焼けした私とは対照的に、透き通るように白い彼女は、どんな色も上手に着こなしてしまう。彼女は髪色も、生まれつきのこげ茶色のため、全体的にフランス人形のような印象だった。
同じ人間でも、こうも違うものだろうかとの衝撃を受け、思わずため息を漏らす私。
彼女は、まるで童話に登場するプリンセスそのものだ。こんなに可愛ければ、素敵な王子様が現れて、めでたく結ばれることだろう。
だけど私のことは、誰も選んでくれない。だって、ワンピースを着ただけで「似合わない」って否定されるんだもの。素敵な衣装を着ても、見栄えもしない自分には誰も見向きもせず、虚しい一生を送ることになるのだ。
若さゆえの思い込みの強さもあり、私はそれからずっとメンズ物の服ばかり着て過ごしていた。そうすることで「お洒落には興味ない自分」というポーズを取っていたのだろう。
だけど大学生になると、さすがに少しはお洒落する必要性がでてきて、私も少しずつ女物の服を着るようになっていた。子どもの頃は「可愛い」を前面に押し出したファッションが主流だったが、20代前半ともなると「綺麗系」も選択肢に加わってくる。意外なことに、高身長の私には可愛い系は難しいが、綺麗系の服装はよく似合ったのだ。
そして迎えた25歳の時。
私は新たなる扉を開いた。交際相手の男性が「絶対に女王様の服装が似合うから着てみて!」というので渋々承知したら、本当に黒いボンテージは私に似合っていたのだ。
肩幅の広さが、寧ろ黒いボンテージにはピッタリだし、黒髪も黒艶の素材によく映える。
「そうか、私はプリンセスじゃなくて、女王様だったのね!」
そんな目覚めを果たした時の衝撃は今でも忘れられない。それからの私は、「女王様にお仕えしたい」男性を尻に敷いて生活するようになった。
今までのコンプレックスが信じられないくらいの万能感に満ちている。
だって私は唯一無二の女王様だから!
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