コンプレックスをポジティブ変換してきた私が唯一どうにもできない生理痛

怒りや悔しさは簡単に燃料にできる。
振り返ると、いろいろな種類のコンプレックスを都度アドバンテージにしてきたつもりだ。人見知りだからこそ社交的なひとに目を向けられて、真似ることで社交的に振る舞えるようになった。人前で話すのが苦手だからこそ学ぼうと思えて、わかりやすく伝えられるようになった。描いた絵をバカにされたから描きまくって、今ではさっと必要なイラストが描けるようになった。
でもひとつ、10年近く抱き続けて未だどうにもならないものがある。生理痛の重さだ。
中高生のときはたまに重いときがあるくらいだったのが、大学生になると鎮痛剤が手放せなくなって、真夏でもカイロを使うようになった。主な症状は腹痛と腰痛だけだったのに吐き気が加わり、ひどいと吐くようになった。経血の量も増えて、ナプキンとタンポンを併用しても怯えながら過ごすようになった。痛みや不快感で眠れない夜が増えた。周りと比較して、生理中に明らかにすべての効率が落ちてしまう自分が嫌いになった。それでも、気力でどうにか取り繕うことで、コンプレックスに蓋をしていた。
つい先日、とうとう人前で倒れた。いつもの周期より10日くらい遅れてきたそれはやたら重く、腹痛も腰痛も増していた。特に痛みの強い2日目は休みたかったけど、わたしの立場で休みは取れない。そもそも今の職場に生理休暇は規定されておらず、無理に取ったら評価に直結する。それをリカバリーできる自信はなかった。
鎮痛剤を規定量のギリギリまで飲んで我慢して仕事をしていたら、腹痛が強くなりすぎて動けなくなった。あからさますぎるから押さえたくないのに、腕は勝手に下腹部に伸びていた。椅子にも座っていられずに職場のど真ん中で蹲りながら、意識が朦朧としてる中で、はっきり「ありえない」と思った。生理痛にも耐えられないなんて、それが原因で人前で倒れるなんて、受け入れられなかった。みんな程度の差はあれど耐えて仕事をこなしているのに、今わたしは耐えられていない。
今まで気力で耐えていたものがふっつり切れたような気がした。2時間くらい休憩させてもらったし、同僚たちは心配してくれたけど、配慮も視線も全部つらくて全部申し訳なかった。意地で定時までやり通して退勤した。生理痛の重さがコンプレックスだと言いつつ、本当の敵はこのプライドの高さなのかもしれない。でも、ただプライドが高いことがコンプレックスなら何らかアドバンテージにできるだろう。その分完璧主義になれるのだから些細なことに気がつけるようになるかもしれないし、責任感を活かして仕事を頑張ることだってできるかもしれない。だけど生理痛の重さって、どうしてもそういうポジティブな転換ができない。
あまりにもどうにもならないから、このコンプレックスとは閉経までお付き合いするのかもしれない。唯一よかったことをあげるなら、世の中にはどうにもならないことがあると身を持って知れていることだろうか。アドバンテージにはならないけれど、その視点をもつおかげで、わたしは周りに棘を向けないで済んでいる。
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