重い生理痛に苦しんだあの頃。性についてもっとオープンに話せていたら

これは、以前から私が私の周りの人々を観察して感じている事ですが、人は一生の中で何回か生まれ変わっていると思う時があるのです。
一番わかりやすいのは人生の節目。結婚を例に取ると、ご本人達の生活も大きく変わりますが、結婚して家を出る方が直前まで実家暮らしだった場合は、ご両親の環境も急に変化します。と、言っても夫婦のみの生活に戻るだけのように思えますが、若かった時とはまた違うようで、母は今でもよく愚痴をこぼします。
話がそれてしまいましたが、コンプレックスとは人生の節目に生まれて、乗り越えたと思われる時に(もしくはまた違うコンプレックスがやってきた時に)終わり、土にかえっていく。と、思いきや時々は成仏できずに幽霊になってまとわりついている。気にしなければ気にならないが、気になりだすと気づいた時には呪われている。そういう、自分の中に飼っているもののような感じがするのです。
その幽霊ペットを飼い慣らす頃には、その人のなかにある玉ねぎの皮が1枚剥けて、白くツヤツヤの部分に触れられたような。少し新しくなったその人に出会えたような。そんな気がするのです。
私の場合、一番のコンプレックスは「性について」話せなかった事でした。
私は今も「女性」ですが、36歳の頃、右側の卵巣以外の生殖器を全て取りました。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症という病気で、幸い悪性ではありませんでしたが、手術後に術後骨盤腹膜炎になり、半月も入院しました。
私の場合、最初から子供はいらないと決めていたので、診断されてから1年半後には手術を決意しましたが、やはり不安でした。
初めて自分でする入院の手続き、入院している間の夫のご飯や洗濯のこと、子宮や卵巣がなくなったらそこには穴が開くの?とか、なぜか死ぬ事は考えていなかったので、手術台に上がるまで震えだす事はありませんでしたが、調べてもあまり欲しい情報もありませんでした。
一番辛かったのは、手術前に半年間、わざと更年期状態にする薬を飲み続けるのですが、突然のホットフラッシュに動けなくなったり、白髪も早く生えてきたように感じたり。そのせいで外出にも抵抗がありました。
周りには「第一次おばあちゃん期だから」と笑っていましたが、老いることへの不安から泣いた夜も一度や二度ではありませんでした。
性について、小学校では、高学年になると男女に分かれて保健の勉強をします。女子はこれからくる生理に備えて、ナプキンの使い方や、生理用のパンツがあることなどを学習しましたが、その量について、どれくらいが正常でどの程度が異常であるかまでは教えてくれませんでした。
誰とも比べることもなければ、女子同士で話すこともはばかられる。まさに秘部という名が相応しい未知の世界。親に聞いても、皆通る道だから。自然な事だから。と言われ、私もそう思っていました。
中学生の頃は生理の量が多く、貧血も重く、ほとんど学校を休んでしまいました。
20代後半でようやく何かがおかしいと勇気を出して内診台に上がるも、不安から萎縮してしまい、「これじゃあ診察ができない。まず自分で触れるようになってから来なさい!」と先生に診察を中断された事もありました。
生理痛は子宮内膜症の症状により、回数が増えるたびに痛みが増すばかりでしたが、薬は身体に悪い気がして35歳になるまで痛み止めを飲んだことはありませんでした。
しかし、それは全て私が無知なだけでした。
痛ければ薬を飲んでもいいし、今は低容量ピルという安全な薬をお医者さんに処方してもらえば、生理を一時的に止めることもできますし、人生100年時代になった現代を考えれば、ピルは内膜症になる事を防げるかもしれない選択肢の1つであるとも思います。
昔はまだ医療はそこまでではなかったかもしれないけれど、あの頃の自分がもっと周りの大人を信頼して相談していたら。世の中がもう少しオープンに「性について」話しても大丈夫であったなら。からかう人がいない安心できる環境であったなら私はもしかしたら、自分の「女性」の部分をもっと大切にできたのではないかと思います。
完全に内膜症を取り切れたわけではないので、閉経まで治療は続けていきますが、ただ、手術をしてよかった事は、性についてのコンプレックスの克服はできたこと。
ほんの少しだけ自分に自信がついて、こうやって書き記す事や人に隠さず相談されたら語れるくらいにはオープンになれる自分になりました。
いつか、昔の自分を知っている人に会った時に私の心の玉ねぎの皮も1、2枚むけていると感じてもらえたら嬉しく思います。
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