子どもの頃から一貫して言われている、あいさつは一番重要だ、という教え。私がその教えを本当に大切だと思ったのは、大人になってからだった。
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子どもの頃は、誰かとコミュニケーションを取ることが苦手で、自分の殻の中に閉じこもっていることが圧倒的に多かった。誰かに話しかけようとしても大きな声は出せず、ねぇ、という声は周りの音にかき消された。
大勢がいるなかで友人を呼ぼうとしても、友人がいる場所までは届かないため、わざわざ自分が動いて、肩を叩いて話しかけるほうが早かった。小学生のときに感じた苦手意識は、今でも残っている。学生の頃は、この苦手意識が理由で話しかけることに億劫さを感じ、誰かと話す機会を極力減らしていた。話す機会をなくしているので、あいさつも最低限しかしない。学校の先生、声をかけてくれたクラスメイト、すれ違う人すべてにあいさつをしている地域の高齢者。1日で数人にしかあいさつをしない日が当たり前だった。
始業のあいさつも、自分の声が届かないように絞り、口パクでやり過ごした。誰かが善意でしてくれるあいさつには、なぜ私に声をかけるのだ、と言わんばかりの不機嫌さがにじみでてしまったかもしれない。他者と関わることがどうしても苦手で、あいさつをしても、目の前で声がしぼんでいき、勢いを失うのがわかるくらいのあいさつしかしていなかった。
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大人になり、社会と触れ合う機会も増えたことで、必然的にコミュニケーションを取らなければいけない環境になった。就活で、あいさつは第一印象を決める重要なポイントだと教えられたので、面接や合同説明会のときにはとにかくハキハキとあいさつをすることに気をつけた。
確かに、気を許して話しやすい関係を作ってくれる人は、あいさつが明るい。話もフランクになりやすいので、面談が楽しかった気がする。働き始めてからも、できる限りあいさつは相手に届く声を意識した。
おはよう、お疲れ様など、言いやすい言葉を選びながら、お腹に力を入れて、勇気を出して発してみた。少しつかれたときは、細い糸のような声で、あいさつをしたことの既成事実を作る事もあったけれど。
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ここまで少し社会人として経験を積んで、複数の業界を見たけれど、やはりあいさつは重要だと気づく。スキルはなくても、あいさつをしっかりと交わせる人は、相手から好印象を持たれて仕事につながりやすい。良い仕事に恵まれる運を引き寄せ、環境を自発的に良くしているのだ。
本人が気づかないところで、その人の良さを滲み出している。今私が関わっている場所も、あいさつがとても重要なところだ。とにかくあいさつをする。感謝を伝える。好印象を残すためのポイントだ。印象操作というとあまり聞こえは良くないかもしれないが、いい印象を持ってもらえることでつながる仕事があるのが事実。
会社の面接でもそうだろう。礼儀をしっかりと身につけている人のほうが、人材として救いの手を差し伸べたくなる。あいさつは、仕事や相手に対してまっすぐさを印象付ける大切なツールなのだと思っている。
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子どもの頃、どうしてもあいさつをするのに抵抗があった私。今でも声が小さくなってしまう時があるが、そのたびに思い直す。あいさつをONの状態ですること、ハキハキと声に出すことは、すべての始まりであると。
相手を見て、しっかりと自分の気持ちを込めて伝えることで、印象は変わると信じている。なかには伝わらない人もいるが、それはそれでよい。伝わる人に伝わって、それが伝染していけば、素敵な人脈を得られるとも思う。これからの仕事にも大きく影響を与えると思っているので、あいさつは大切にしていきたい。
今になってやっと、あいさつがいかに重要で、自分に返ってくるのかを実感している。子どものころにはきっとわからなかっただろう。でも、中学生や高校生くらいには気づいていたかった。大人になって知ったことが遅くても、これからたくさん還元していこう。そう思えた発見を持ってきてくれたのが、私にとってのあいさつの思い出だ。