初めてエッセイを投稿したのが、2020年の11月。当時、私は留学中で、雪の降るスイスの街でエッセイを書いていた。あれから5年。あれから社会は、私は、どう変わっただろうか。

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先日、自民党総裁選挙で高市早苗氏が総裁に選出された。自民党史の中で初めての女性の総裁である。戦後から始める現代史上、かなり重要な歴史的瞬間に立ち会った気がして、決意に険しい表情を浮かべる高市氏に、ひっそりと心打たれた。もしかすると、日本で初めて女性の内閣総理大臣が選ばれる可能性が生まれたのだ。歴史が少し動く音がした。しかも、今までののらりくらりと嫌味で交す様な男性老人議員ではなく、記者からの質問にわかりやすい言葉で明朗に答える高市氏に、好感を持たざるを得ない。

さて、あれから社会はどう変わっただろうか。コロナは終息したものの、ロシア・ウクライナでの戦争、中東イスラエルとガザ地区での紛争が始まり、毎日世界のどこかで誰かが攻撃して、誰かが亡くなっている。日本は、東京オリンピックも終え、先日は大阪・関西万博も大盛況で閉幕した。

しかし物価は上がり続けているのに、円安は加速し、オーバーツーリズムで街中は外国人に溢れている。未だ夫婦別姓や同性婚は認められず、育休の取得については2024年に法改正されたものの、個々に見てみれば自由に取得できる様な状況の会社はごく僅かである。相変わらず、いわゆる「昭和」の経営形態や労働環境が変化していないのは、肌で感じる。

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私は、どう変わっただろう。2021年に体調を崩して心療内科に通い始めてから、2022年に退学し、その後すぐに就職したものの今年の8月に退職した。祖父母は4人全員が旅立ち、姪と甥が1人ずつ生まれた。大学院中退、正社員就職と退職し、現在は雇用保険の失業手当を受けるためにハローワークに通っている。同級生や同世代の同僚とも、どうも話が合わなくなってきた。

31歳。結婚、出産、転居、仕事のキャリア…目まぐるしい変化を迎える年齢である。私自身もいろんな変化を経験してきたし、5年前の私と全く一緒かと問われれば、多少変わってしまっているような気がする。

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実際、5年前に想像していた未来ではない私を生きている。根本はそこまで変わっていないけれど、変わらざるを得ないもの、反省して変えたもの、私は変わらないと思っていても、気付かないうちに変わってしまっていたもの。たくさんの変化を体感した。

年齢を重ねるうちに体力や新陳代謝は自然と落ちていくし、年齢によって求められる社会での役割のようなものも少しずつ変化する。留学を諦めて大きな挫折をし、せっかく見つけた仕事も辞めてしまってまた挫折。自信なんて育つどころか、どんどん削ぎ落とされている。

正直、いい感じの袋小路。先の見えない暗闇。万全の体調の日なんてほぼなければ、何者にもなれなかった自分を、呆然と見つめる日々。変わらないでいようとしても、その大きな時の流れに私は抗うことができなかった。

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お世話になった「かがみよかがみ」も、閉鎖されてしまうことを知った。これが最後のエッセイである。たくさんのエッセイを掲載させてもらったし、このようにして社会とのつながりを持ち、自分の考えていることを見たこともない誰かと共有できる、とても貴重な機会だった。非常にありがたく思っている。このおかげで、文章を書くという習慣が生まれたし、自分の様々な経験を文章に落とし込んでそのやるせない思いを整理する術を得て、たくさん助けてもらった。

全部が消えてしまうと思うと寂しいけれど、仕方がない。私は変わってしまった。社会も。だけれど、根本に大切にしているいくつかのことを大切に持ち続けて、これからも生きていきたい。