「男の仕事と、女のどうしよっかな~は違う」に返す言葉を見つけるまで
 
			「やっぱり男の人の一生の仕事と、女の人のどうしよっかな〜は違うじゃない?」
これは2年前、母と話していたときに言われた言葉。キャリアスクールで学び始めたことやこの先やりたいことを伝えていたタイミングだった。「なんでもやってみればいいと思うよ」という応援をもらった後に言われた言葉だったので、母に悪意はなかったと思う。でもわたしは、とてもショックを受けたのだった。
わたしの母は、ずっと働いてきた人だ。
わたしや弟が生まれる前には美容師をしていて、その後も銀行員だったらしい。専業主婦をしていた時期もあったらしいが、わたしが物心ついた時には飲食店でパートをしていた。その活躍を認められて今では店長として働いている。
大変なこともあるのだろうが、お店に食べに行くといつも笑顔で接客をして、お店を盛り上げる母がいた。小さい頃からそんな姿を見てきたから「わたしもどうせ働くなら楽しそうに働ける仕事がしたいな」と思っていた。母のように、かっこいい人になりたいと思っていた。
そんな憧れの母から言われたのが冒頭の言葉。まさか母からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。目の焦点が合わなくなって、言葉に詰まって、頭に血が逆流したように顔が熱くなったあたりからの記憶はない。あのときのわたしはなんと返したのだろう。「そっか、まあそうなのかな」なんて当たり障りがない言葉を言ったかも。
その時は何が嫌だったのか言語化できなかった。ショックだ、モヤモヤするとだけSNSに書き残していた。
その後わたしは新卒で勤めていた会社をやめ、ワーキングホリデーに行った。そこでは性別問わず誰もが挑戦をしていた。英語を学ぶ中では、日本では遠慮してしまうようなことであっても、お互いのために正直に伝えることも必要だと知った。
キャリアスクールでは、働き方も職種も多様なことを知った。挑戦している人、もがいている人たちはキラキラしている。わたしも、自分の人生は自分で選びたい。仕事も生活も、周りの人も大切にしたいという気持ちを叶えていくために、フリーランスになってみようと決めた。今は少しずつ自分なりのスタイルに出会いはじめている。
今日まで、2年前の母の言葉を、ふと思い出して何度も考えた。きっとこれからもたまに思い出すだろう。あのときはうまく言えなかったけど、今のわたしならこう伝えたい。
「一生やっていけるような好きな仕事に出会いたいと思っているのは、わたしもそう。年齢や性別は関係ないと思うんだよね」
女性だから、結婚するから、子どもを産むから、いつか仕事を辞めるかもしれない。そんな理由でどうしよっかな〜と思っているわけじゃない。自分なりに、人生に責任を持っているつもり。
母がずっと楽しそうに働いている姿はわたしの憧れで、わたしはずっとそんなふうになりたい。この気持ちはずっと変わっていない。だからそんな母でも男の人は、女の人は、と思うものなのかと、とても悲しかった。
「わたしはあなたと向き合っている」と自分の言葉で表現し続けるために、わたしは変わり続けたいのだ。あのときはうまく返せなかったけれど、これからは誰か大切な人と自分の意見と違ったとしても「どうしてそう思うの?」と聞いて、その考えを受け止められると思う。そしてそれに対して「わたしはこう思う、こう考えているよ」と言えると思う。
つい先日母と話したとき、また仕事のことを話す機会があった。母は「結局やっていることってどこかで繋がっていて、仕事でもそれ以外でも、無駄なことってないなって思うよ」と言っていた。「そっか、いいね。わたしもそう思えるようになりたい」と素直に言えた。
わたしも、母も、変わり続けている。
 
   
                    

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