あなたはお母さんのことが好きですか?仲良しですか?
私は母のことが好きですし、子どもの頃から大人になった今も仲良しです。
しかし、母のことが好きで尊敬しているからこそ苦しんだ過去がありました。

◎          ◎ 

将来の夢は幼稚園の先生でした。
これは毎日楽しそうに幼稚園で働いていた母の影響です。子どもが好きな人は先生になるんだろうと思っていました。
小学校の卒業文集でも、高校や大学受験のときも、私の夢はブレませんでした。意志が強いなんて褒められることもありましたが、実際は子どもが好きな人の仕事について知らないことが多すぎただけだったんだと思います。

母とは"子どもが好き"という以外にも昔から共通の好きがたくさんあります。
まずは推しです。私には10年以上ファンを続けているアーティストがいるのですが、家のテレビでライブDVDを観たり車の中で音楽を流したりしているうちに母もハマっていました。今でも一緒にライブへ行き、「今のかっこよかったよね!」と興奮するポイントも一緒なのでとても楽しいです。また、カフェ巡りも好きなのでよく一緒にカフェに行きます。

そのほかにも共通の好きがたくさん存在するので、私と母は"価値観が同じ"なんだろうと思っていたんです。

私たちは考え方が似ているから、言葉にしなくても大丈夫。

そう思い込んで、いつのまにか心がすれ違うようになってしまいました。

◎          ◎ 

大学を卒業した私は、母と同じ幼稚園の先生として働くことになりました。キラキラした楽しいことばかりではないことも聞いていたので、ある程度の試練には耐えられると思っていました。
しかし、そんな私の想像をはるかに超える試練が待っていました。先輩方と価値観が合わないと陰で悪口を言われたり雑用を押し付けられたり。後輩の前で「こうなっちゃだめだからね?」と見せしめにされたこともありました。
精神的苦痛を味わいながらも母が同じ状況になったら私と同じ判断をすると思う。私は間違っていないと自分を奮い立たせて毎日がむしゃらに働きました。

そんな私の心がぽっきり折れてしまったのは就職から4年目の秋。この世から消えてしまいたいと考えるほど追い込まれていました。母を、家族を悲しませたくない一心で職場のことは相談しないようにしていたのですが、心身ともに限界でした。
心療内科を受診して適応障害の診断を受け、私は数カ月間休職したのちに退職しました。

これからどう生きていくか考えたときに、ITを学ぼうと思ってオンラインのキャリアスクールに入会することを決意。現在も在籍していて、1年4ヶ月くらい経ちます。そこでは自分の視野の狭さが恥ずかしくなるくらい、多様な価値観をもった方に出会いました。たくさんの方に出会い刺激を受け、起業したいという新たな目標もできました。
私は新たな目標に向かって頑張ることが楽しくて嬉しくてすぐに母へ報告しましたが、母の反応はイマイチ。「それで本当に稼げるようになるの?」と否定されてしまいました。
私はそこで初めて私と母は似ているところが多いけれど、同じではないんだということに気づいたんです。

◎          ◎ 

母はひとつのことを極めたスペシャリスト。私は幼稚園の先生としての経験を活かして自分にしかできない新しいことに挑戦したいマルチポテンシャライト。
似ているけれど同じじゃない母と娘。言葉にしないとわからないことも多いです。
否定されたくなくてキャリアスクールでの学びや成果を隠して過ごしていたので、私の将来を心配する母とあまり言葉を交わさなくなり"冷戦"のような状態になったこともありました。

正直苦しかったです。嬉しいことも悲しいことも分かち合えなくて息が詰まりそうでした。

これからは、母をリスペクトしつつも自分の意見や想いをしっかり伝えて、心地いい関係を続けていきたいと思っています。