あなたに伝えたいことがある。

上から目線で申し訳ないけれど、これまであなたは本当によくやってきた、と。

母ひとり、子ひとり、いまでは当たり前にある母子家庭だけど、ひとつひとつの家族にはたくさんのストーリーがあって、その軌跡も含めて、あなたに感謝したいとおもう。

20年間以上、2人で暮らしてきて、あなたがうっとおしいときも、あなたがいることに救われることも、たくさんあった。

今日はこれまでよくやってきた、という子供という立場ではなく、ひとりの人間としての祝福と、あなたの娘である私からの目線をお伝えしたい。

子供ながらに感じる苦しい状況。あなたを支えなきゃと思っていた

気づいたときには、母親だけしか家にいなかったので、父親がいないことになんの疑問も持たなかったし、

母親が当たり前にいることが、これまでの人生だったから、近すぎる距離にお互いがいることで、分かり合えることも、分かり合えないこともたくさんあったね。

喧嘩して、口を聞かなくなっても、ぷんぷんしてるお互いがバカらしくなって、吹き出して笑って、「わたしたち、なんで喧嘩してるんだろね。」なんて、いいながら、あーだこーだ言いながら仲直りして。

あなたが大人気なくそっぽを向いて怒って、私に向かって「いや、あなただってぷんぷん怒ってるくせに」って、言い返してくることを簡単に想像できるの。

やっぱりなんだか娘だからなのか、あなたのことがよくわかるみたい。

いまでこそ、たくさんいろんなこと話しているけれど、子供の頃はあなたと会話した記憶はあまりなくて、

わたしは話したかったけれど、あなたはそんな状態じゃなくて、苦しかったんだよね。

子供ながらに、あなたを支えなくては、と強く心に思ったことをわたしは今でも覚えているよ。

踏ん張って生きていたあの頃、言えなかったあなたから欲しかった言葉

涙を流すことも、悲しみを分かち合うことも、その時はできなかったから、いま、あなたに伝えたいことがあるの。

子供ながらに、わたしは、ずっと踏ん張ってここまで生きてきてしまった。

思ったよりも地面に足をを踏み込んだまま、力が入っていたんだと思う。

泣かないように、涙が流れるのを堰き止めるように、あなたに甘えるのを我慢して、大粒の雫が、あなたにみえないようにしてきたのだとおもう。

でも本当は、ただ、

あなたに笑顔で「おかえりなさい」と言われたかった。

学校から帰ってきて、ただ、あなたにそう言われたかった。

それだけで多分よかったんだとおもう。

過去に戻って、それをしてくれたら、あの時状況が変わったのかとは思わないけれど、あの頃のわたしはただ、そう言ってくれる母親に居てほしかった。

どこか道の真ん中で突っ立って涙している小さなわたしが、あなたの「おかえりなさい」を待っていたんだとおもう。

学校から帰ってきても、「おかえりなさい」がない静かな家に、寂しさだけが募っていて、「ただいま」と言うことすら、やめてしまった。

返事が返ってこない冷たい部屋が、あの頃のわたしには耐えがたいものだった。

この場を借りてあなたに伝えたい、私の本当の気持ち

本当はこれを伝えることは、実は一生ないとおもっていたのだけど、こうやって書き綴る機会があって、こうして過去の自分を反芻してる。

でもね、
これを伝える以上に伝えたいことは

子供の頃の小さなわたしは、それでもあなたを愛していたとおもう。

子供ながらに足を踏み締めて、必死で立っていたの。

涙は止まらなくても、わたしが、頑張らなきゃって、あなたに心配かけては、いけないと。

だからその頃から、ずっとわたしは生きることを頑張ってきたのかもしれない。

だけどそろそろ、頑張って生きることがやめられそうだから伝えられるようになったのかもしれない。

あなたに、「いつまでも元気でね。」なんて無責任なことは言わないけれど、あなたがいることで、救われる人がいて、愛してる人がいることを、この場を借りてまっすぐに。

お母さん生んでくれてありがとう。
愛してる。