「来週の金曜日、コリドー街行かない?」
私はこの友人からの誘い首を縦に振ったことは1度もない。コリドー街とは、都内にある有名なナンパスポット。沢山の男性が、女性に声をかけるために道路脇で佇んでいるらしい。2往復して声をかけられなかったら女として終わってると言われてるそうだ。
自ら負け試合だと分かっている戦場に足を踏み入れられる程、私はメンタルが強くない。
わかってる。私は120パーセント声を掛けられない。お世辞ではない。自分のことは自分が1番分かっている。
でも20代前半の頃の私は、いつかその街を歩きたかった。誰にも言えない密かな目標だった。ギラギラしたチャラそうな男性から「おねえさんかわいいね!お茶しない?」と声を掛けられてみたかった。
だから、どうしたらナンパされやすいかをたくさんネットで検索した。
コリドーのナンパ師から声をかけられるために必死だった
私が実際に行ったことは下記の通り。
①色白の方がモテると思って、外にいる時は全て日傘をさした。夢の国にいても、他全員が水に濡れるパレードではしゃいでいても、日陰で傍観した。
②漆黒アームカバーを常に装着した。
③サングラスを電車内でもかけた。
④アイラインを引いた。太さは3ミリ程度。
⑤髪の毛も上司に指摘されないギリギリまで明るくした。
⑥ダイエットを決意した。
⑦いつかそのとき恥ずかしくないように全身脱毛サロンに通うことにした。(40万円也!)
当時はコリドーのナンパ師から声をかけられるために必死だったのだ。もはや健気にがんばりすぎていたことを褒めてほしい。笑
髪の青い女子大生も、ランドセルを投げ捨てた少年も、羨ましかった
私の通っていた大学には服飾の学科があった。
彼女たちの中には髪の毛が青色の人が数人いた。また、その服どこで売ってるの?と聞きたくなるほど、ド派手な服を着ている子もいた。
私は、しゅ、しゅごい!一体どこで染めてるんだ!!どこにこんなコート売ってるんだ!?
と心の中で思うと共に、内心とってもとってもとっても羨ましかった。彼女たちは、自分がしたいから青色に髪を染める。実にシンプルで潔かった!
他にも以前こんなことがあった。
私はエレベーターに乗って下に降りようとしていた。
途中の階で、小学1年生の男の子がムスッとした顔で乗ってきた。
と、いきなり、「学校なんて消えてしまえ!消えろ!」と叫び始めた。
朝の静かなエレベーターの中は一気にものすごいことになった。
そして、一階にエレベーターが着いた瞬間、なんとあろうことか彼はランドセルとプールバック、全ての荷物をエレベーター内に置いて走り去ったのだ!
私はこのランドセル放置逃亡事件(笑)がずっと忘れられない。
これがよいか悪いかは置いておいて、彼には敵わないなあと思った。
髪を青く染めた女子大生も、ランドセルを投げ捨てた幼い少年も、自分の欲に忠実だった。人からの視線の優先順位が低いのだ。
髪の青い女子大生に「その髪型、男にモテないよ!」と言ったとして、彼女がどんな目を私に向けてくるかは想像に難くない。
小1の彼に「クラスの女子に嫌われるからやめなさい!」と言って彼がランドセルを今すぐ拾いに行くとは思えない。
「かわいい」という言葉を待つだけの人生なんてつまらない
大人になるということは、丸くなってしまうことなのかなあと思う。今の私が仕事に行きたくないから、通勤カバンをエレベーターに投げ捨てることはさすがにない。(いつかポイっと捨ててみたいけど)
丸くなって全てをうまくコロコロコロコロ避けられ、流されるぐらいなら、トゲトゲでたまには、グサッとキリッと攻めてみたい!
丸は転がるけど、一つでもトゲがあればその場で止まることができる!
「かわいい」という言葉を言われるのを待つだけの人生なんて私はとってもつまらない!
結局、努力したことの結果はこうだった。
①真っ白色白にはなれないことを悟り、日焼け止め程度にした
②アームカバーは白くした
(友人が「真夏に全身黒い格好してる人っていつ本気出すのかね?」って話してて納得したから)
③サングラスは炎天下のみ
④アイラインはキツくなるので引くのを辞めた
⑤髪の毛は飽きて黒く戻した
⑥ダイエットはほぼしなかった笑
⑦全身脱毛は行くのが億劫で解約。
(毛の自己処理はめんどくさいけど、少しぐらいべつにいいや)
残念ながら、ナンパ師のかわいいと言われたいことへの執着、魔力ははこの程度だったのだ。
ナンパ師は5秒ぐらいで、女性を見定めてるらしい。24時間を基準に考えると、たったの1/864000だ。
そんな一瞬で、判断されるなんて余りにもチープすぎる。私の魅力を5秒で査定ですと?
ナンパ街を歩くことはこれから先も絶対ないけど、もし歩いたら声をかけてきた男性に「(ナンパ常套句の)お茶でもどうっすか?のお茶ってなんですか?(カフェでエスプレッソすするわけないでしょ!!)」って言うと決めている。
ナンパ師との争いは、私にとっては無用な無意味な戦い
ナンパスポットへ行くことを最初、負け試合と冒頭に述べたことを前言撤回したい。
日本には、「負けるが勝ち」というとても素晴らしい言葉がある。
これには、ただ負けることが勝ちという矛盾した意味ではなく、始めから無用な戦いはしないという意味があるとのこと!
ナンパ師は私の戦う相手ではない。
戦う相手は食後の眠気ぐらいで十分だ!!
コリドーのナンパ師との争いは、私にとっては無用な無意味な戦い。
だから私は絶対に最初から参加しない。負けるが勝ちだ。
最後に私のトゲは何かお伝えしたい。
ずばり、ショッキングピンクのショートパンツだ。
履いているとき、すっごく幸せな気持ちになる。脚が長いのではないか?と勘違いできる素敵なアイテム!!!
アラサーにド派手なショートパンツなんて年甲斐もなくありえない!!と言われそうだが、安心してほしい。
なぜなら、
その言葉は既にエレベーターに投げ捨ててきたからだ。