「すね毛剃ったらだめだよ。太くなるよ。」と母に言われ、高校時代、私はすね毛を剃ることができなかった。とは言え、周りの友達は皆、すね毛を剃っており、毛の生えた私の足は非常に目立っているように思えた。特に体育の時間に短パンになった時、水泳の時間、夏服の時、毛の生えた私の足や腕を見るたび、私は自分の自信が削がれていくのを感じた。
腕毛が気になり憧れの先生の指導が身に入らない私は、剃る決意をした
ある日、高校の教育実習で、大学生の若い数学の先生(男性)がやってきた。今だから言えるが、私は数学が苦手で、全くわからなかったので、実は半分寝ながら授業を受けていた。ほんのひとときではあるものの、今まで何の楽しみもなかった数学の授業に、青春の風のようなものが吹き始めるのを感じた私は、これまで半分寝ていた数学の授業を真面目に受けることにした。
女子の多いクラスで、当時、若い男の先生と言うだけでかっこよく見えるフィルターがかかっていた私は、わかるはずもないのに、放課後毎日その先生のところに数学の問題を持っていき、先生の隣に座って数学を教わっていた。
その時であった。ちょうど6月半ば頃だったと思う。夏服を着た私の腕に生えた毛が、気になって気になって仕方がないのだ。横並びで教わるので当然、先生の目にも私の腕の毛が見えているに違いない。「これでは肝心の数学に身が入らないではないか!!」そう思った私は、腕毛を剃ることを決意した。
母強い決意で剃ったものの、母に見つかり高校時代最初で最後の毛剃りに
母の目を盗みながら毛を剃るスリル。もしかしたら、剛毛になってしまうかもしれないという恐怖。そんな様々な葛藤と戦いながら、私は毛を剃ることに成功した。何食わぬ顔でリビングを歩いていると、突然、母が私の太ももを下から上へさすり始めた。
「毛剃ったと?なんで?いじめられてるの?」思いもよらない母の言動に私は驚いた。「薄いんだから剃らなくていいよ。お母さん剃ったことないよ。」これが母から娘への愛と言うものなのだろうか。そうなのだろうか、、、。
そんなわけで、私の高校時代の毛剃りは、これが最初で最後となった。
街中で見かける脱毛。剃れないのもつらいけど、脱毛は当たり前なの?
あれから7年。現在24歳、一人暮らしの私。今では自由にあちこちの毛を剃ったり剃らなかったりできる。通勤中の電車の中には、一面に脱毛サロンの広告。女性向けのメジャーなファッション雑誌の中でも、脱毛は「女たるものするべきこと!」というマナーや常識として紹介されている。ふと、冷静に考える。「でも、毛って必要だから生えるんじゃなかったっけ?」髪とか眉毛とか鼻毛とか、やっぱり必要だからあるんだよなぁって思ったり。
毛を絶対に剃っちゃいけないのも辛いけど、こんな風に、「皆するのが当たり前なんだよ。」って押し付ける世の中も息苦しい。大事なのはきっと、自分以外の誰かが決めたマナーや常識を必死に守ることではなくて、自分自身の自信につながる何かを自分で探して、行動するっていうことなんじゃないかなと思う今日この頃です。