けっこう「あるある」なことかもしれない。
エステに、どどんと、ウン十万注ぎ込んだ。
具体的な金額は言えないけど、ボーナス以上の金額がエステ代としてなくなった。どうしてそんなに高いお金を払ったかというと、当時はエステが「自己投資」だと思ったからだ。自分にお金をかけることでよりよい人生が待っている……なんて思っていた。単純だった。
これからお話しするのは、お金を費やしたのにエステが「失敗」に終わったという、とほほな話。
ただ、はじめに断っておくと、別にエステサロンを悪く言いたいわけではない。エステサロンの店員さんは、きちんと施術してくれたのだから。それだけは皆さん、ご承知おきを。

「言うて痩せたい」ゴコロをくすぐられた

さて、わたしが、どどんとお金を注ぎ込んだエステとは、その名も「体質改善コース」というものだった。
身体の老廃物を外に流して、めぐりをよくすることで、体質をよくしていきましょう、という、十数回にわたるコースだ。体質が改善すると代謝も上がるので、自然と痩せやすくなるといううれしい効果もついてくるという。
このコースのほかに、実は「痩身コース」という、ダイエットに特化したコースもあったのだが、そちらは選ばなかった。
なぜかというと、痩身コースを選ぶことで、「わたし、ダイエットしてます」と公言するようなものだと思ったからだった。
つまり、わたしは心の底では痩身を願っていながら、堂々と「痩せたい!」と発言できない、むっつり系ダイエッターだったのである。

でも、世の中には同じように、「#言うて痩せたい」とハッシュタグをつけて心の中だけで発信を行っている人は案外多いのかもしれない。
というのは、エステティシャンの方がこなれた口調で、「言うて痩せたい」ゴコロを上手にくすぐってきたからだ。
冷え性なんですね、代謝よくなって、ぽかぽかになって、ついでに食べても太らないような身体になったらうれしいですよね~。
なーんて言われたら、どうですか、わたしじゃなくてもなんだか施術してほしくなるんじゃないでしょうか。

これで痩せ……いや、体質改善できる、と思っていた

施術は、最新機器を使って行われた。なんでも、普通にマッサージするだけでは、セルライトをなくしたり流したりできないのだそうだ。だが最新機器を使うと、セルライトが解消できる……とのこと。

エステティシャンの方いわく、
「セルライトがなくなったら、スキニーも似合う足になりますよ~」
出た! 殺し文句! 「スキニーも似合う足」!!
すごく魅力的な言葉だが、言われても特別な反応は示さない。だって、わたし、スキニーも似合う細い足が目的じゃないですもの。あくまでも、体質改善が目的ですもの。つんと澄ましていた。今から思うと、単なるへそ曲がりだが。

そんなこんなで、最新機器を使いつつ、「体質改善」を目指す日々は半年ほど続いた。エステには隔週で通った。エステ以外のときは骨盤ベルトとやらを締めて、これで痩せ……いや、体質改善できる、と思っていた。

だが……変化はほとんど見られなかった。
洋服サイズはそのままだし、体重だってほとんど現状維持、もともとの体質だった冷え性やむくみも、特記すべき違いは表れなかった。
あれっ、あれっ、もうすぐコースが終わるんだけど?!
そう思っているうちに、「体質改善コース」は終了してしまった。なんということだ……。

本当に痩せたかったら、自分の身体と向き合うことが大切なのだ

唯一、変化があったとしたら、「自分の身体を他人に見られる」ことにほんの少しだけ慣れたということ……だろうか。
エステでは、紙の下着をつけてほとんど肌を露出させて施術を受ける。それに、一応ビフォーアフターを記録してもらっていたため、施術前後で写真を撮られる。「言うて痩せたい」自分の身体を見せるのは、「ひゃー!」という思いだったし、それを写真に撮られて自分で見なくてはいけないのも「ひゃー!」だった。
それが、繰り返すうちに、「あ、自分ってこんなもんか」と変に納得するようになり、「このようなわたしですが、見られてももういいです」と開き直るようになった。
それがかえって痩せ……いや、体質改善の効果を止めてしまったのかもしれないが、仕方がないといえば仕方がない。

今思うこと。それは、本当に痩せたかったら、まず、自分の身体と向き合うことが大切なのだ、ということ。
その上で、開き直ったりしないで、「痩せます!」と自分に宣言してみせる必要があるのだ。そうじゃないと、ダラダラと、目的の定まらない日々を過ごしまうと思うから。

わたしがエステで身体に大した変化が起こらなかったの原因は、おそらくここにある。
わたしは、痩せたいとか、変わりたいとか、自分の願望にきちんと向き合わなかった。ごまかしながら、心の奥底でぼんやり願っていたところで、結局なーんにも変わらないんですな。
かくして、むっつり系ダイエッターの試みは失敗に終わった。
エステ代は、霞のように消えていった。