「女の子は小さい方が可愛いじゃ~ん!」

と、私の頭に手を乗せる、貼り付けた笑顔を嫌というほど見てきた。
経験上、この言葉を言ってくる女性は例にも漏れず全員、後々低身長を馬鹿にしてくるから要注意である。

私は身長145センチで、平均より小さいことは数字でも視覚でもよく分かる。ただ、これくらいの身長は、実はそんなに珍しいものでもない。
身体的なコンプレックスなんて望んで抱える人はいないだろうが、横幅に比べて縦幅はどうしたって努力じゃ補えないものである。例えば私が7センチのハイヒールを履いたところで、ミラノ・コレクションに出ることはおろか、客室乗務員にすら多分なれない。

夢すら見られない身体的なコンプレックスに対して、よくもそんな言い方が出来るもんだなと思ってしまうこともあった。

コンプレックスの身長。個性に、強みに…ってそう簡単にできない

さすがに高校入学あたりから、自分の身長が平均に満たないことも、この先満たすこともないだろうことにも勘づいてくるもので、その内に自分の個性として強みにしようとする。自分は漏れなくそうだった。
けれども、隣の芝生は青々と見えるもので、洋服を綺麗に着ている人を見たり、「〇kg太っちゃった…」となんの変化もない見た目で言われたりすると、さすがに「もう少し、もう少し…」と望んでしまうのが性なのだ。

いつまで経っても実年齢に見られないことも、電車の中で掴まれない吊皮があることも、キッチンの上の収納が使えないことも、他人にとってみればなんてことはない小さなことだが、毎日積み重ねるとジワジワと大きく黒いシミが心にできていく。そして、日常生活の大半を物理的に見下されて過ごすのである。

物を取ってほしいと頼むだけで、「あざとい」?なんて心外

もうお分かりでしょう、性格も歪むさ、そりゃあ。いや、これは偏見かもしれないが、低身長を強みにした女性は「あざとい」と言われることが、たぶん多い。

よくある低身長シチュエーションでいうと、高い所の物を取ってほしいと頼むことがある。仕方ない、だって届かないんだもの。そして、他人に取ってもらうんだから、相手が「取ってあげよう」と思うように頼む方が良いに決まっているではないか。萌え袖で握った両手を顎に添えながら上目遣いで言っているわけではないのに、誰かを頼るだけで「あざとい」と言われることはかなり心外である。

ちなみに、そんなわけで私は「あざとい」大肯定派だ。ま、さりげない「あざとさ」が一番異性に効果的なことはかなりの女性が把握しているし、結局これが王道であり、至高なのである。

その一言が、コンプレックスを抱える誰かの傷になるかもって考えて

ここまで読み進めて、私の伝えたいことが「低身長は大変なのだ!」だと思っている方がいたら、そうではないことだけは知っておいてほしい。実際、得することもたくさんあるので…。

では、何かと。いじるのは無しにしようという話。特に身体的特徴をいじるのは無しにしようと。お互いの信頼関係がかなり相当この上なくしっかり成り立っていて、本当にお互いに何の遺恨もないのなら、文句はないけれど。コンプレックスが無い人より、コンプレックスがある人の方がきっと世の中多いから。

かく言う私は一言余計なところがあるし、言葉の端々に棘があるとよく言われるので、言及する内容だけではなく、言い方まで気をつけなきゃいけないんですけどね。精進精進…。

気にかけたこともないけれど、いつもいじってるあの子の外見は、果たしてあの子にとって良いことなのか、悪いことなのか…なんて、これを読んで思ってくれた人がいたら、私はもう何も言うことはない。
そしてそんな人でいっぱいになったら、もうちょっと平和な世界になっているかもしれない、なんていうのはさすがに壮大すぎか!!