私の息子達が通う幼稚園には、年間行事の中に「お餅つき」がある。今年はコロナ対策をしながら、先日実施された。我が子達はお餅が大好きなので、毎年その日が来るのを楽しみにしているのだが、実は私もその日を楽しみにしている。何故なら、大好きなあんこを炊くきっかけが出来るからだ。

お土産に、と彼らが園から持ち帰ったお餅と一緒に、圧力鍋で炊いたつぶ餡を頂く。最&高。我が家の年中行事「あんこ炊き」は今年で3回目。私は毎度あんこを炊きながら、「私もおばちゃんになったもんやな」と思う。そんな私は現在28歳だ。

……みなさん、何か引っ掛かりました?

30代前半の女性の自称「おばちゃん」は不適切?

先日、SNS上で30代前半の女性が「おばちゃん」を自称した文章の投稿が、ちょっぴり物議を醸していた。

ことの顛末はこうだ。最初に発信されていた投稿の内容は、若い女性の健康に関して。定期的に婦人科の検診を受ける重要性を訴える内容だった。そしてその投稿を見た人が「30代前半がおばちゃんを自称するのは不適切」と感じ、その趣旨のレスポンスを返した様だった。

自称「おばちゃん」として情報を発信した女性は、直ぐに不快感を与えた点を謝罪し、さらにそれに対しては多くの人から「そこまで気にする必要はない」というコメントが付いていた。その一連の流れを見た私は、結構モヤモヤした。

白状します 「若い癖に」も「おばちゃんやから~」も経験済みです

SNS上で起こる炎上の多くは、元々事故だったものが事件に仕立て上げられているのではないだろうか、というあれやこれやは、以前(というかついこの間)別の文章で考えたことがある。だからそれは一旦脇に置くとして、30前後の女性がSNS上ではなく、対面で「おばちゃん」を自称することについて、少し考えてみたくなった。

まず最初に押さえておきたいのは、「若い癖に年寄りぶっちゃって~(笑)」と思ったことが、自分自身にあるかどうか。私は正直、ある。それもたかが2、3年下の相手に、思ったことがある。「もうオールとかおばちゃんやからキツいわwww」ってなに言っとるんや(笑)はいはいあなた十分若いですから、大丈夫ですよ~(笑)、みたいな。

さらに正直に言うと、私自身20代前半の時点で「もうオールとかおばちゃんやからキツいわwww」と言ったことがある。え……なにこれ。矛盾の塊。

幅広い年齢層が集まる場では声のボリュームさえも命取りになる

年齢って数字だ。数字は嘘をつかない。同い年の間柄だと、年に関してのポジティブな発言も、ネガティブな自虐も、ギャグの範疇で収まることが多い。しかし、様々な年齢の人が集まる場面では、そうはいかない。

私自身が数年前に「失敗したな~」と思い、今でも引きずっている年齢に関する失言がある。それは年齢が様々なママ達の集まるお茶会でのこと。アンチエイジングが話題になったのだ。

目の前で繰り広げられる、結構年が離れてるっぽいママ達の、美容に関するルーティーンやエステについての興味深い会話。気になる。面白くもある。しかし、一回り以上歳の離れた先輩ママに「おばちゃんだからさ」「もうキツいのよ~」「老化だわ(笑)」とか言われた時、どんな顔してるのが正解なんですか……?(焦)とりあえず誉めとく?それすらもウザがられる??新米ママ(私、当時26歳)、プチパニック。

私は「へぇ~」「そうなんですね~」と無難な相槌を返していたつもりだった。しかし私の、ちょっと声が大きかった「そうなんですね~」のせいで、会話が一瞬止まったのだ。

ザ・ワールド。

そして何事もなかったの様にまた流れていく美容トーク。私の発した失言は、ちょっと声の大きい「そうなんですね~」。全然大したことじゃないと思う。思うんだけど、その一瞬止まった空気の気まずさは、未だに私の中では流れていっていない。

多分当時は知り合って間もなかったという事もあって、私の年齢は周知されていなかった。だから、一言も発さずに、微笑んでおくのが正解だったんだろう。今ではみんな気さくに話しかけてくれるから、結局それで何か実害が出たわけではないのだけれど。

しかし私は未だに年上ママとの美容トークがハイリスクハイリターンなものだと思えてならない。お茶会でそっちの方向に話が流れて行った時には、脳内でアラートが鳴り響く。たとえそのママ友と比較的親密な関係であっても。

数年前の失敗を踏まえて、「でも旦那が美容に興味なくって~」とか「日焼け止めは何使ってるんですか~」とか、当たり障りのない、かつ具体的な質問を返すように留意している。美容賢者達から学べることはかなり多いが、私が年下(かつ美容愚者)ゆえに萎縮してしまっていることは否めない。

でも、人と話す時には取り扱い要注意な「おばちゃん」という言葉

結局、自分のことを「おばちゃん」だと思うのは当然自由。1人の人間の中でさえ、「年を重ねる」ということも「おばちゃん」という言葉も、色んなイメージと結び付くものだ。毎度あんこを炊きながら、「私もおばちゃんになったもんやな」と思うのも自由。エステに通いながら「私っておばちゃんかしら」と思うのも自由。

しかし私があんこを炊いた話を、自身をおばちゃんだと自称して年上のママ友にあえてするかというと、絶対にしない。あんこを炊いた話をするとしても、「地味な趣味しかなくて(笑)」とか、別の言葉に言い換えると思う(あんこに流れ弾)。

そして、自身をおばちゃんだと自称することは、年下に対して望まない威圧感を与える可能性がある。それは年下の私が身をもって体感してしまったことだ。みんながみんなそう思うとは限らないだろうけれど、これは、1つの可能性として。

いつかはみんなおばちゃんに そしておばちゃんは素敵な女性

リアルのやり取りであってもこれだけ取り扱い要注意な「おばちゃん」という言葉。何歳の相手が読むか分からないSNSで使うことが、もちろん駄目だとは一切思わないし、私も今後何気なく使うことはあると思う。でも、文脈によっては意図せずに火種になってしまうかも?ということは、もう認めざるをえない。

他人に対しての「おばちゃん」発言ではなく、自称「おばちゃん」すら異議を生む令和。せめてこの「おばちゃん」という言葉の持つ意味の多様性が世に広く知れ渡ることを望む。だって、みんないつかは自称、他称共に、しっかりとおばちゃんになるのだから。そして、あんこを炊く自称「おばちゃん」も、オールがしんどい自称「おばちゃん」も、エステに通う自称「おばちゃん」も、みんなみんな、素敵な女性なのだから。