2019年、新卒から4年間勤めた職場を離れた。パワハラを受けたわけでもなければ、特別ブラック企業だったわけでもないが、やりがいを感じていたわけでもなかった。昇進試験を目前にした2018年の12月、「よし、辞めよう」とふと心の奥に湧いてきた選択に私はなんの疑問も持たずに従った。そして辞めるならばそれなりの理由と目的を用意しなければいけない気がして、ワーキングホリデーのビザを取得し1年間海外に行くことにした。ちなみに英語は大の苦手である。

大学時代もそして今も、……両親から援助を受けている

 仕事を辞めてから海外に行くまでの半年近く、何をしていたのかと聞かれれば何もしてないと答えるのが正解だと思う。申し訳程度に英会話教室に通い、知り合いの飲食店でアルバイトをさせてもらった。なんともストレスのない期間だったが、この期間がさらに私の甘えた根性に拍車をかけた。
 私は大学生の時にアルバイトをしていない。全ては親の仕送りで私の生活は成り立っていた。加えてこの、海外に行くまでの期間も、そして海外から返ってきた今も、実は両親から時々経済的援助を受けている。いや、本当に恥ずかしいことなのだが。

 ここまで書けばお分かりかもしれないが、2021年の決意を改めてさせていただきたい。私は「稼ぎたい」。自分1人が生きていけるだけの、欲を言えば両親に助けてもらった分を返せるだけの稼ぎが欲しい。だったらすぐにでも汗水垂らして馬車馬のように働けばいいという世間の声が聞こえるような気もするが、私の決意には条件があるのだ。

私の唯一の後悔は就活 だから、今度は「書くこと」を仕事にしたい

 2021年、私は「書くこと」を仕事にして「稼ぎたい」。

 私は、大学の文学部に入学した。出身が田舎なこともあってか、進路指導の先生や周りの大人たちからは「大学の文学部に行ってどうするんだ」「文学部女子なんて就職できない」「資格がないと役に立たない」と散々な言われっぷりだったが、当時の私は世間体?何それおいしいの?とでも言わんばかりに周囲の評判は気にしない人間だったし、何より大好きな日本語と日本文学を学びたくて、屈せず半ば無理やり試験を受けた。合格した時はとても嬉しくて、これから好きなことを勉強して好きなことを仕事にできるのだと心躍らせた。

 先に言っておくと私はあまり後悔しない性格である。しかし、唯一、私は就職活動中のことを後悔している。出版業やライター業に就きたかったがなかなかに難しい業界で就職浪人も考えていた時、周りには「とりあえずでもいいから就職した方がいい」「最低3年働いて転職した方がいい」と言われ先の職場にとりあえず就職した。田舎から都会という広い世界で揉まれたのか、染まってしまったのか、その時の私は、同期が就職する中で取り残される私を想像して怯んでしまったのだと思う。今でもあの時の選択が良いものだったのか自信が持てない。もちろんあの職場に行かなければ海外留学もしていないかもしれないし、職場で良い同僚に巡り合えた今はないかもしれない。しかし後悔していないと言うとそれは嘘なのである。

お父さんお母さん、少し時間をください 私はそんなに弱くないはず

 海外で出会った友人はみんなとても輝いて見えた。自分の夢のためにしっかりと勉強をし、周りがどうこうではなくいつでも自分が主役。自分のしたことの責任は自分で取れると思っているのだ。もちろん実際できるのかはわからないが、ただそう思うだけでもできることの範囲がとても広がるような気がした。まるで高校生の私みたいだと思った。あの時、私が私を無敵だと思えたのは、世間を気にせず、自分の好きなことにただひたすらにまっすぐだったからかもしれない。

 だから私は、私がずっと憧れていた「書くこと」で自立できるように「稼ぎたい」。無敵な私でいるために、死ぬときの自分に恥じないために。

 お父さん、お母さん、少し時間をください。こうなった私はそんなに弱くないはずです。