あねきとは今から約10年前、私がまだ大学生の頃にアルバイト先で出会った。
このときはまだ知らない。この出会いが私を変えることになるなんて。

就職活動に失敗。アルバイトとして働いたけれど、なかなか転職できず

あねきとは早朝のバイトでシフトが重なる日がたまにあった。
あねきは自分の意見がはっきり言えて、たまに毒舌、いつも明るい性格で、
情に厚く、話していて飽きない人だ。
人見知りの私はそんなあねきのことを慕っていた。

やがてアルバイト先が閉店となりバイト仲間とも会う機会が減ったが、あねきとは10年たった今でも連絡を取り続けている。

そうこうしている間に私は大学を卒業し就職をした。
私は就職活動に失敗し、大学時代のアルバイト先で一緒だった先輩の紹介で事務のサポートとして先輩の職場でアルバイトとして働かせてもらうことになった。
いつか正社員にするとのことだったが退職するまでの半年間週3のアルバイトだった。

先輩は優しかったが、少し気分屋なところがあった。
進んで仕事をしようとすると先輩からは気を遣わなくて良いと言われ、他の方からはもっと進んで仕事をしろと言われたりと間に挟まって辛かった。社内でも浮いていた。

当たり前だが給料も週3のアルバイトの私なんかに満足のいく金額なんて支払われるわけではない。
このままでは生活ができないため私は転職も考えていたが、働かせてもらっている先輩に申し訳ない気持ちがあり、なかなか転職活動に踏み切れなかった。

会社に馴染めず、今の仕事を辞めるか悩んでいると、あねきから連絡が

入社から5か月ほどたった頃、先輩の妊娠が判明した。
先輩は「しばらく産休と育児休暇を取得することになるから事務の仕事を全部教えるから覚えてほしい」と言われた。

しかし会社に馴染めないこともあり、今の仕事を辞めるかどうかで悩んでいた。

そんなとき、あねきから連絡があった。
「最近どう?」
私は今の状況をすべて話した。
あねきは「今の生活のままで本当にいいの?」と私に聞いた。
あねきは続けてこう言った。
「先輩のことを抜きにして、自分の生活のことを考えるべき。正社員にするなんて、本来は先輩が言うべきことではないし、社長が決めることだから、今後も変わらないと思う。本当はどうしたいの?人のことを考えすぎ。自分の幸せを考えるべき」
その言葉にはっとした。
きっと私は心のどこかで「もう自分の幸せを考えても良いよ」と誰かに言って欲しかったんだと思う。

何もなかった私。もしあのとき、あねきが背中を押してくれなければ

あねきに相談してから気持ちが楽になり、「そうだ。自分の人生だ。先輩は関係ない。
もう転職しよう。今ならまだ人生をやり直せる」。
そうやって前向きな気持ちになり、先輩には申し訳なかったが転職活動を始めることにした。

転職活動をし始めたが、スキルも何もなかった私。
強みはがむしゃらに仕事をすること。ただそれだけだった。
面接もことごとく落ち、落ち込むこともあったが、
何としてでも転職したかった私は面接を楽しむことにした。

最初は慣れなかった面接だが、いつの間にか慣れ、面接というものが楽しくなり、
落ち着いて話すことができるようになっていった。

そして、未経験でもスキルを身に着けられる今の職場に出会った。
今はネットワークエンジニアとして働いている。
この業界に就いてもう6年だ。

もしあのままあの場所に留まっていたら、また別の出会いがあったのかもしれないが、
私は今の人生が好きだ。大切だ。
もしあのときあねきが背中を押してくれなければ、
今の仕事と出会えていなかっただろう。
今も正社員として働けていなかっただろう。
上司とも出会うことがなかっただろう。
大切な彼とも出会うことはなかっただろう。

あねき。
あのとき背中を押してくれて本当にありがとう。