中学生のとき、急に勉強に熱が入り、真面目になった。
きっかけは父親の仕事の都合で上海に移り、念願のインターナショナルスクールに通えることになったからだった。やっと英語で色んな教科を勉強できる環境に身を置ける。希望と期待に満ち溢れ、初めて勉強に熱心に取り組むようになった。
しかし学校に通ってみると、英語を母国語とする学生がほとんどいなかった。先生との会話以外は、みんなそれぞれの母国語で同じ国籍の友達と話している。クラス内でまともに英語で話していたのは中国語ができない私と、インド人の友達だけだ。
インターナショナルスクールと言えば英語が飛び交う環境を想像していたから、かなり期待外れだった。それでも学費を無駄にするまいと、こつこつ勉強した。
気が付いたら学年一位の成績だった。話したこともない同学年の子や、偉い先生方から尊敬の眼差しを受けた。優等生の立場は気持ちよかった。
帰国と共に優等生から劣等生へ 倒れても頑張り続けた苦しい3年間
ところが。高校入学とともに日本に帰国すると、日本の勉強について行けず、一気に劣等生に転落してしまった。一生懸命勉強したが、頑張り方が間違っていたのか、評定平均は3.4。一気に自信を喪失し、クラスメイトとうまく話せなくなった。勉強も運動もできない自分なんて、同じクラスの優等生と話す資格がないと思い込んでいた。それでも学校、塾、部活を両立し、何事にも懸命に取り組んだ。
高校3年生の秋ごろだろうか。急に倒れた。頑張りすぎて逆流性食道炎になったのだ。毎日ストレスで胃痛が起こった。それでも学校には毎日通った。今考えると、無理に学校に行かなくてもいいのにと思うが、その時の私は真面目過ぎた。努力が実り、高校三年の成績は信じられなぐらい上がったが、自信は失われたままだった。苦しい3年間だった。
「就活をやめろ」と父に言われ、休むことが必要だとようやくわかった
大学生になった。大学の勉強は性に合っていたようで、好成績を取り続けた。胃痛は知らない間に感じなくなっていた。
しかし大学3年の交換留学とその後の就職活動を機に、再び発熱と胃痛が始まった。私はまた真面目過ぎるという罪を犯したのだった。
大学4年の9月、半年たっても就職できないと、さすがに精神が崩壊した。父親に「就活をやめろ」と言われた。なかなか諦めがつかなかった。
9月下旬になって、やっと就活を完全にやめた。家の近くの精神内科に通い始めた。学校のカウンセリングも受けた。特別支援も受けた。その結果、体を休める必要があると分かり、休学した。
暇になったので、大好きなサンリオピューロランドに行った。ぐでたまのムービーショーがあったので、ふらっとに入ってみた。
自分とは正反対の「ぐでたま」に教えられた「だらけることは罪ではない」
ぐでたまというキャラクターを長い間私は好きではなかった。真面目な自分と正反対だったからだろう。ぐでたまはいつもだらだらと寝たり、ゲームをしたり、不平を言ったりしている。でもその日は、ぐでたまに会ってみたかった。そしたら私の生き方を変えるような一言を言われた。
「もっと、ぐでっとだらっと、楽に生きてみれば?」
ぐでたまの話し方や素振りからそんなメッセージが伝わった。私のためのメッセージだった。
これまでも精神内科の先生や母親から似たようなことを言われたが、どこか腑に落ちなかった。でも、ぐでたまのだらけた姿と口調にはとても説得力があった。
どんなにだらけていても、ぐでたまのありのままの姿を好きな人がいる。それにぐでたまに「しっかりしなよ」と叱る客はいない。だから、だらけることは罪ではないのだ。
今も私は休学中だ。のんびりと家の中で過ごしていると、ときどき頭の中でぐでたまが動き出す。「ぐうたらしなよ~」と言いながらゴロゴロする姿を想像するたびに、ちょっと救われた気持ちになる。