恋愛なんて不思議なものだ。
ロマンスはやはりロマンスなのだ。

大好きだった彼のことも、自分の成長によって頼りなく見えてしまうことがある。さようなら、と告げてしまう、時が来る。

私は最近、彼をふった。
理由は、冷めてしまったから。
私の情熱が、彼の情熱を追い越してしまった。

生きることはこんなに自由で刺激的だということに、私の方が先に気づいてしまった。それを私は自分の成長と呼ぶ。

やりたいことが見つからない私は、医者志望の彼に夢中で恋をした

ちょうど2年ほど前、私はその彼と付き合った。医学部だった彼は、「良いお医者さんになりたいんだ」と、自分の夢を語った。「毎日コツコツ勉強をして、将来のために頑張っているんだ」と、真面目で、堅実な人だった。

やりたいことも見つからず、なんらパッとしない私は彼をみて、「なんて情熱的で美しい人なんだろう、なんて優しいんだろう」と思った。夢中で恋をして、彼のために料理を作り、彼のために美容に力を入れ、彼のために自分の予定を変更したりしていた。

彼からの連絡がないとソワソワして不安になった。ケンカして、「別れて」と言われても「絶対に嫌だ」と言い張って、好きだという思いを突き通していた。

そんな私が、彼に魅力を感じなくなった。

それは、私自身に夢ができたから。将来に対する情熱が生まれたから。就活の中で、やりたい事を考え続けたから。私だけの、私らしい、良い人生にしたいと本気で思ったから。

「人を助けたい」という情熱も、動機も、私は彼を上回ってしまった

それは、こんな思い。

私は人の心と体の健康を、もっともっと広げていきたいんだ。自分が、家族の中で人を本当に憎み、いつもイライラして、何をしても鬱っぽかったこと。それから肌が荒れて、体がおかしくなって、どんどん落ち込んでいったこと。「死にたい、本当に今すぐ、消えて無くなりたい」何度もそう思ったこと。

だからこそ私は、人の健康を願いたい。人の心と体の幸せを作りたい。

自分の辛さからくる、心の奥底から湧き上がる、夢だった。空虚だった、かつての私が完全に忘れていた、熱い思いがようやく、蘇ってきた。

そんな時、私は新しい人に出会った。
「俺の夢は医者のいらない世界なんだ!」
「心と体の健康があって初めて、人は健康なんだよ!!」

そんなことを、恥ずかしげもなく、熱く堂々と語る、医学部出身の男の子。学生の間から開業なんかしちゃった男の子。変わり者で、志の高い男の子。

付き合ってた彼に、「なぜ医者を目指したの?」と聞いても、曖昧な答えしか返ってこなかった。人を助けたいんだ、という情熱が、圧倒的に私の方が優っていた。何をするのにも、動機が、私の方がはっきりしていて、私の方が強かった。

もう、この人は、私の憧れるものを持っていない。

手に入れたらまた、燃え上がる気持ちはなくなってしまうんだろうか

そして、新しく出会った男の子との熱量の差。

生きることに対して、自由と夢を存分に持っている彼の方に、私は惹かれていた。私がほしいのは、この情熱だ。情熱から夢を現実にしていく、強さだ。着実に前に進んでいく、力だ。

この人は私に、自由に生きることの楽しさを教えてくれた、必死に生きることの素晴らしさを見せてくれた。必死に生きているこの人は、私と恋愛関係になったとしても、遊ぶ時間もないだろう。恋愛関係になったら、彼の人生にトラブルが多すぎて、私もヒヤヒヤするだろう。そう思ったし、今の彼のような安心感や安全は無くなるけれど、私は新しい彼の生き方に憧れていた。

彼のような、「熱さ」が私には必要なんだ!!
私も、自分を持って強く生きていきたいんだ!

そんな憧れが、私を、次の恋愛に推し進めた。

この、憧れも、私が完全に手にすることができたら消えてしまうんだろうか?
今の燃え上がる、ロマンスの感覚はまた消えてしまうんだろうか?

いや、それでもいい。
「さようなら」と、別れを告げた。

熱すぎてキモいな。
そんな、冷めた自分もまだまだ心に残っている。だけどもっと、熱くなりたいから……。