忘れもしない、私の最悪のデートの記憶は8年前。当時大学生の私は、社会人の彼氏と付き合っていた。

ショッピングモールで映画をみて、昼食時になったので、目についたカレー専門店にはいった。カレーが好きだと嬉しそうに話す彼。運ばれてきたカレーに目を輝かせると彼が一言。「なにこれ。」

彼が頼んだのはキーマカレー。

「こんなのカレーじゃないよ。」「全然美味しくないんだけど。」と終始文句が止まらず、私が食べていたカレーも味がしなくなり、早く帰りたい…と頭の中でずっと念じていた。

彼を責めることもせず終始苦笑いで我慢しその場を乗り切ったが、この人と付き合っていていいのかな?と疑問が湧いたが、そんなことで…と振り払い、付き合いは続いていた。

愛されているとあぐらをかいていたら、突然の別れ話

それから3年ほど経ち、私も社会人になり彼とは遠距離恋愛に…。忙しくなり会える時間は段々と減っていたが、遠い距離でも会いにきてくれていた彼に私は愛されている、とあぐらをかいていた。付き合って4年記念日から少し経ったある日、突然電話で「別れよう。」と告げられた。

ひと月前に旅行に行き、前日にもいつものように連絡を取り合っていたので、私の頭は真っ白になり、会って話をしてほしいと涙ながらに懇願したが、会えないの一点張りで電話が切られてしまった。

それからの2週間は落ち込み、友達に相談したり、彼に「4年付き合ったのに、電話口で別れようだけじゃ納得できない。よりを戻そうとはもう思わないから、理由を教えてほしい。」と連絡をとったりして、自分の気持ちと折り合いをつけようとしていた。不思議なもので、悲しみの後には怒りが込み上げてきていて、2週間経った後は私の心はぐつぐつと煮えたぎっていた。

もっと感謝の気持ちを伝えれば良かった

会う事は出来ないが電話なら、とやっと連絡がきた時は少しだけ安心した。私の好きだった人はそこまで人でなしではなかったと。しかしいざ電話してみると、仕事の休憩時間だから急いでほしいと言われ、会ってもくれない、時間もとってくれない不誠実さで怒りが爆発し、喧嘩腰の話し合いになってしまった。

「どうして、突然別れようなの?」と聞くと「俺がいつも気遣ってたの分からないの?」と言われ、「なぜ会ってくれないの?」「会ったら別れられないから」と、疑問がわく返答ばかりで電話は切られ私達の4年間はあっさりと終わってしまった。

そこから私は自問自答しながら過ごした。

いつもご飯を奢ってもらったり、訪ねてきてもらってばかりだった。もっと感謝の気持ちを伝えれば良かった。

男性とデートする時は自分で考えた悪い所を直そうと務めたが、好きになっても振られてしまうかもといつも怯えていた。別れる時に明確な答えがもらえなかった事で、私はずっと自分のダメな所を考え続け心に余裕がなかった。

今幸せなのはあの時間があったからだと心から感じる

しばらくすると、仕事にやりがいが出てきた。もう好きな人なんていなくても大丈夫。1人でも生きていけると、恋愛に固執しなくなると、プライベートも仕事も充実してきた。

そして知人の紹介で、今の旦那さんに出会うことができた。彼とのデートは何を食べても美味しくて、初めて見たり聞いたことも2人で一緒に楽しめた。

幸せだからこそ感じる、あのキーマカレーが全てだったのだと。

初めて見たキーマカレーを「こんなの頼んでいない」と言った元彼。

一口食べた時「まずい。」と言った元彼。あの時全てが詰め込まれていた。

紛れもなくメニューを見て自分で頼んだキーマカレー。初めて見たものを否定する価値観。自分でした事に全く責任能力がないのが、あの時のデートで浮き彫りになっていた。私が感じた疑問は間違ってなかった。

けれど、自分の悪い所を見つめ直す時間をくれたことにはとても感謝している。旦那さんには絶対に「ありがとう」を伝えているし、何でも話すことが出来る関係性になっている。

なにより、私の作ったキーマカレーを美味しいよ、と頬張る姿は微笑ましく、幸せを感じる。今幸せなのはあの時間があったからだと心から感じる。

元彼にもし伝えられるのなら感謝と「黙ってキーマカレーを食べろ」と伝えてあげたい。