きっかけは、私の些細なLINEでの一言だった。「もしかして、別れようとか思ってる?」
「いつ会える?」と頻繁に聞いてくる彼から、最近その旨の連絡が来ない違和感からだった。半分は冗談のつもりだった。
すると「考えてた。よくわかったね」と、たった数文字が私の頭でエコーのように響き、動悸が速くなるのを感じた。焦りとも、悲しみとも、不安ともいえない、形容のし難い感情だった。
私と彼の「3年間の関係」は、たった10分程度の会話で幕を閉じた
初めて付き合って3年間で喧嘩もしたが、お互いに信頼し合っていると思っていたし、世間知らずな私はこのまま結婚するとも思っていた。自分達には別れる日なんてこないと本気で信じていた。
よくテレビや雑誌で「別れよう」と言われた時には、引き止めない方が良いと聞く。それがいかに至難の技か思い知らされた思い出話をしても、自分にとって彼がどんなに大切かを語っても、自分を変えると言っても、彼の決心は揺らがなかった。
中々「別れる」と言わない私を見兼ねたのか、彼は「まず距離をおこう」と言い始めた。私は「別れるわけではないのなら」と、藁にもすがる思いで承諾し、様々なサイトで復縁についての記事を読み漁った。実践もした。
だけど、結局は意味をなさなかった。「話をしよう」と彼から連絡が来た時、私は全てを悟った。私と彼の3年間の関係は、たった10分程度の会話で幕を閉じた。彼の話を聞いている時、不思議と涙は出なかった。
彼と別れた後、涙が枯れるくらい泣き、枯れてしまっても構わなかった
彼と別れたあと、急にもう彼にとって自分が特別な存在ではないこと、あの当たり前だった日常が過去のものになったことを実感して、道を歩きながら私は人目も憚らず涙で顔をぐしゃぐしゃにした。1人では立っていられないと思ったし、本当に心には穴が空くんだと思うほど心臓のあたりが痛かった。
ずっと見守ってくれていた母は、泣くことしかできない私に電話で「迎えに行くから待ってな」とだけ言った。そばで私を励まし笑わせてくれたり、一緒に泣いてくれたりした友人は、バイトに向かう途中だったにも関わらず「ちょっと待ってて」と言った。友人は高級カップアイスを買ってきて、バイト前の時間を私の鼻水と涙を拭くのに費やしてくれた。母は「えらかったね」と何故か褒めてくれた。
涙が枯れるくらい泣いたし、枯れて干からびてしまっても構わなかった。別れた数週間は事あるごとに彼を思い出し、朝起きるといつものように連絡が来てるのではないかと期待した。他の人で忘れようとも思ったが、結局解決してくれたのは時間だったと今では思う。
彼と別れた当初は気付かなかったけど、多くのもの残してくれていた
別れた当初は、初めての恋人は私から多くのものを奪っていったように感じたが、今では多くのものを残していったのだと思う。人の温かさや、大切な人達の存在、自分の良いところと悪いところ、今この瞬間を大切にすることへの思い。
全て無になったと感じたあの時の私へ。
泣きたいだけ泣いていいよ。無理なんてしなくてもいい。頼りたいだけ人に頼っていい。でも、また歩き出せるようになったら、そのときは支えてくれた人達に精一杯感謝すること。次にその人達が辛い思いをしているときに、支えること。
そして、大好きだった彼へ。
「あの後、付き合った彼女と幸せになってね」なんて言えるほど、できた人間ではないけれど、不幸にはなるんじゃないよ。