わたしのお城をつくりたい。
朝は近所の美味しい珈琲屋さんの豆で作ったカフェオレに、少しミルクを足して飲もうね。
小さくて、あまり人気のない観葉植物を一つだけ育てる。
世界中のとびきり可愛い雑貨や絵を買って部屋中に飾ろう。きっとおふだみたいに、外の世界の理不尽な怒りや不条理から守ってくれる。
寂しくないベッド、鳥の歌声が聞こえる窓の向こう、夕日の見えるベランダ。
きっと一人じゃ広すぎて、あなたを招き入れてしまう。そしていつか家族が増えても、わたしはわたしのお城の中を守りたい。だから働いている。時にはこの社会と繋がらないために、働くという社会との繋がりが必要だ。
「お城をつくりたい」なんてメルヘンで現実離れした発言に見えるだろう。でもわたしは、わたしが大事な人、わたしを大事にしてくれる人をそれくらいの気概で守るために働く。
わたしの父は、「守る」ために働いてくれていた。わたしが高校生の時、母が癌になった。その時、一番納得がいく病院へ入院できたこと。毎日1万円する個室に入れられたこと。そのことで母らしく生活が続けられた。それは母だけでなく、わたしの心も救ってくれた。「出来る限りのことをした。」と、納得できたから。
また、母が亡くなると弟は不登校になった。その時も、父は通信制高校や家庭教師等、弟に合った教育を提供した。そのおかげか、弟は無事大学に進学できた。
わたしも、わたしのお城の中を守りたい。
あなたも私自身も、守ってあげたい。そのために働いている
あなたが外の世界のドロドロに汚された時、溺れるより先に「そんなところいなくていいよ。」と匿ってあげたい。
子供が産まれ道に迷った時、「他にもたくさん道があるよ。」とできる限りの可能性を示したい。
もし家族が病気になった時は、心置きなくお金を使って個室の部屋に入れてあげたい。
そのために働いている。
でももう一つ大事なことがある。それは、守る対象に自分自身を入れること。これは実際に働き始めてから大切なことだと気づいた。
就職活動の時は、仕事内容はあまり気にせず、とにかく大きくて安定した企業を目指した。
だから正直、今のわたしにとって働くことは楽しいことではない。働くことでわたしは色んな形にへこんでいる。自分が納得のいかない意見を、さも自分の意見かのように伝える。知らない人の不機嫌や大きな声で心臓がドキドキする。
そんな日々は、肝心のわたしを守れない。
わたしが大事な人を守りたいのは、その人がその人らしくいてくれることで、わたしもわたしらしくいられるからだ。
だからきっと、わたしがわたしらしくいることも大切なのだ。
自分のままでいることで守り合う。そんな関係の人を増やしたい
それを考えてから、「働く」の最終的な目標は、わたしのお城を以って、「わたしがわたしの形のまま社会と繋がること」になった。
自分のままでいることで守り合う。そんな関係の人を増やしたい。わたしのお城で休める人を増やしていきたい。例えばこの文章を読んでもらうように。
わたしが働く理由は、大切な人、そしてわたし自身を守るためだ。