元カレの親友と仲良くなった。
ストーリーでわたしの好きな邦楽をあげていて、それにリアクションしたところからDMするようになった。関係を急ぐように、すぐ仲良くなった。

大好きだけど、わたしたちの関係に名前はつけたくなかった

ソフレがほしいなんて言うわたしに「じゃあ、なったげる!」なんてちょろいこと言って、彼はわたしの家に来た。そんなにちょろくていいの?君。
音楽の趣味が一緒だった。得意科目が一緒だった。本を読むのが好きなのが一緒だった。好きなブロガーまで被った。2人ともプリンより杏仁豆腐が好きだった。
どんなことでも話が合った。
そんな些細なことでも似ているのがうれしかった。
「暇な時は寝てるか本読んでる」なんて話す彼が愛おしいと思った。バイトして部活して春休みからは車校にも行って……
時間なんてないはずなのに、家に来た。わざと忘れ物をしていくあざとさが好きだった。わたしも人のこと言えないくらいちょろいね。
「忘れてるよ!」なんて白々しくLINEしてしまう自分のことも愛せた。

すごくすごく大好きだけど、わたしたちの関係に名前はつけたくなかった。名前のない関係だって、わたしはずっと一緒にいれると思ってた。関係を型に嵌めて名前をつけるような、そんな野暮なことはしたくなかった。
好きだって言うと、大好きって返ってきて。好きにならないでなんて軽口を叩いてるのが楽しかった。好きになんてならないでいいからずっと一緒にいてよ。好きなんて気持ちどうせすぐ醒めるに決まってる。飽きるに決まってる。だからピークなんて来ないでほしかったし、ずっとこのままがよかった。

「一生友達でいてね」なんて言葉を何度も言っては、笑われていた

友達じゃ収まりきらないくらい好きで、大好きで、親友とは違って、恋人にもなりたくなかった。恋人になっても、いつか別れちゃうでしょ?終わりがきてしまうのが嫌だった。
わたしたちはまだ若くて、わたしは社会人だけど、2個下の彼はまだ1回生。結婚なんて想像もできないし、まだまだする気もないから、恋人なんていつか別れるでしょ?契約も交わしてない関係は終わりが来る。それが嫌だった。
「一生友達でいてね」なんて言葉を祈るように何度も言っては、彼に笑われていた。

他人から見たらセフレなのかな。それでもよかった。一緒に居れたらなんでもよかった。一緒に好きな音楽の話をした。国語の先生ってえろいよね。なんて意味のわからない話を深夜ベランダでタバコ吸いながら話した。寝れない!なんて怒って一緒に散歩した夜もあったね。一晩中ベッドでいちゃいちゃして気づいたらお昼前でびっくりした日もあった。
彼に「25歳になっていい人いなかったら結婚してね」なんてふざけて言ったけど、あれ結構本気だったのよ。結婚に興味はなくても自分のものにしてしまいたかった。関係に名前をつけるときが来るならセフレでもカップルでもなく、一生離れないでいられるような契約を交わしたいと思ってた。

こんなに好きなのに、終わりが来るのが見えてきていた

だけど、いつしか彼の返信はだんだん遅くなって、電話もしなくなった。こんなに好きなのに終わりが来るのが見えてきていた。いつか捨てられるのが怖かった。いつか、はこないかもしれないけど、気持ちが離れていってるのがわかるから悲しかった。察しがいいの。

だからわたしは自分の決心がついたタイミングで彼の前から消えることにした。家に彼が置いてった荷物をまとめて彼の家のドアにかけておいた。この坂を登るのも、このアパートの階段を上るのもこれが最後なんだね。涙は出なかった。本当に悲しいのになんでかな。実感湧いてないのかも。

夜になったら1人で寝るベッドが広すぎて泣くのかな。まだ後悔してる。本当は追ってきてほしかった。縋ってほしかった。なんて言っても仕方ないね。もう飽きられてるのがわかって、わたしが振っただけだから。お互いそんなつもりなんてなかったし、割り切ってたのにね。わたしだけ本気になって馬鹿みたい。まだ大好きよ。好きでいさせてほしい。愛してる。