「名字とは何か…」人を哲学的にさせる改姓の苦行。結婚の「幸福感」で乗り切れる?
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
皆さんこんにちは!助産師のシオリーヌです。
夫婦での連載「#結婚生活A面B面」をいつもご覧いただいて、ありがとうございます。
前回は私たちが法律婚を選択し、夫が改姓してくれることになるまでの話し合いについてお話をしました。
記事を公開した後には改姓についてモヤモヤを抱えていた方からのコメントなども届き、こうした情報がネット上に存在することで、「改姓をしたくないという思いを持つ人もいること」や「結婚するときには話し合いが必要な場面もあること」を少しでも多くの方に知っていただくことに役立っているといいなと、改めて感じているところです。
今回は夫が改姓をしてくれると決まった私たちが経験した「名義変更手続きのあれこれ」について、お話をしていこうと思います。
自分は改姓をしていなくて、パートナーがどんな手続きをしていたのかも知らない、という方にはじっくり読んでいただけたら嬉しいです。
夫のつくしが改姓を引き受けてくれると決まったとき、思い出していたのは私が一回目の結婚で経験した、あまりにも面倒すぎる苦行ともいえそうな「名義変更手続きの山」(★)のこと。
当時の私は結婚したら女性が改姓するのは当たり前のように思っていたし、自分が手続きをして回ることにも違和感も覚えず、なんなら結婚おめでたハッピーパワーでそうした手続きにも新鮮さと楽しさを覚えていたように思います。
(★)運転免許の更新に印鑑登録の変更、3枚あるクレジットカードの名義変更に、2つの銀行口座の名義変更。生命保険の名義変更、格安SIMの名義変更にパスポートの再発行。それから助産師・看護師・保健師・受胎実地調節指導員という4つの国家資格の名義変更に借りているアパートの名義変更。Amazonをはじめとする様々なwebサービスに登録した顧客情報の変更に、職場での旧姓使用の申請などなど……。
今思い出してもうんざりするようなこれら手続きは、ネットで済むようなものばかりでなく、平日の日中に役所や銀行等々の窓口に直接行って手続きをして、後日にもう一回訪れてパスポートやら資格証やらを受け取らないとならない、というものも多く、なんだかもう手続きの渦中にいるときには「名字を名乗るという行為にはいったい何の意味があるのでしょうか……?」とうっかり哲学を始めてしまいそうになるくらい、気の遠くなる作業でした。
それでもこの苦行をなんとかスピーディーに乗り越えられたのは、「結婚したことで訪れるハッピーパワー」と「比較的平日休みの多い看護師という仕事」のおかげでした。
あと、私がしっかり者だから。
しっかり者の性格じゃなかったら、旧姓のままのクレジットカードやパスポートを手元に抱えたまま数ヶ月ぼーっとしていることなんて余裕でできただろうし、実際にそういう人もたくさんいると思います。全くもって責める気にならない。だって大変だもん。
そして何より最悪だったのは、離婚をしたときですよ。
結婚よりも離婚の方が3倍は疲れるなんて言葉も聞いたことがあるような気がしますが、ただでさえ離婚を決定して心身ともに疲弊しているところに覆い被さってくるのが、(★)を繰り返す手続きの山です。
もうなんか私、前世で悪いことでもしたんですかね、と。そう思わずにはいられませんよ。
(どんな理由で離婚に至ったのかと気になりだした方がいたら、私のサブチャンネルに上がっている動画をご覧くださいませ)
しかも今度はハッピーパワーの力を借りることもできないので、ひたすら「義務感」のみで身体を動かし、一つひとつの手続きをまた初めから繰り返していくわけです。
パスポートや各種国家資格の変更なんかは名義変更のために安くないお金もかかってきますので、気力と体力を奪われるだけでなくお金まで取られるという三重苦。
「こんなに頑張ってるんだから、お金くれたっていいくらいなのに……」と恨み言を言いながら、なんとかかんとか手続きを遂行しました。
と、そんな思い出が思い起こされながら、つくしが改姓を引き受けてくれたときには「あの手続きは全部一緒にやろう」と誓いました。
幸か不幸か改姓手続きに関しては非常に詳しい人間になっておりましたので、効率のいい方法で最短で手続きを完了するスケジューリングを考え夫と共有。私も仕事の休みを作って、一緒に各種窓口を回る「名義変更ツアー」を開催しました。
もちろん名義変更にかかる費用はすべて折半。銀行や役所の窓口で過ごすやるせない待ち時間も、彼だけの負担にはしたくなく、せめてもの思いで一緒に待ちました。
それでも、そこまでやったとしても、改姓してくれたということの恩はまだ返せていないと思っています。きっと返しきれることはありません。
私の思いを尊重してくれたということへの感謝は、この先もずっと胸に留めて暮らしていこうと思っています。
これから結婚をする予定でパートナーに改姓をお願いする皆さん、その負担をまずは知って、可能なら一緒に手続きをすることをお勧めします。どうしても一緒にいけないのなら、かかるお金を負担するとか感謝の気持ちをきちんと示すとか、そうしたコミュニケーションは大切にしていただけたら、なんて勝手ながら思っております。
ちなみに、離婚後の名義変更手続きはすべて完了しているにもかかわらず、未だに時々Apple storeから届くメールに旧姓(前夫の姓)が登場してくるのですが、これってどうしたらいいんでしょうか。詳しい方がいたら教えてください。
“性の話をもっと気軽にオープンに"をテーマに、 性にまつわる様々な情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌ。 身体の仕組み、感情や欲求との向き合い方、大切な人との付き合い方、自立について… 学校でも、社会に出ても誰からも教わることができない「性」にまつわるあらゆる問いに、 真剣に向き合い、具体的な知識を伝えるための一冊です。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。