大学2年生のとき。中高6年間いじめを受けていた私は、今までできていなかった恋愛という経験を得るために、異性から交際を申し込まれては、断らずに付き合っていた。
初めて一方通行ではない「心」を感じた大学2年生の夏
そうしているうちに、所属していたインカレサークルで彼と出会った。某国立大学の同期で、「頭の回転が速い」と嫌味のように言われる私とも話題が一致した。
大学2年生の夏、私から相手に好意があることを告げた。同時に、「飼い殺しは嫌いだから、付き合う気がないのならば、すぐに切ってほしい」 とも伝えた。すると彼は「普通に好きだから、離れていかれるのは寂しい」 と言った。私はその言葉に浮かれていた。初めて「心」が一方通行でなくなったのだから、嬉しいに決まっている。
その後、彼がデート当日に「地方から出てきた友達と会うから延期してくれ」と言ったときは、物分かりのいい女を演じた。
ただ、実はその約束が決まってから数週間の間に、服を買い、美容室に行っていた。
「お前の飼い主は俺だろ、ワンって言えよ」
メッセージを送られたときは、素直に「ワン」と送り返した。
今思えば、彼は相当性癖が歪んでいる。
「やらせろ」と体を求められたとき、最初は躊躇したが、自身の戸惑いを無視し、さも「そういうこと」に慣れている女を装った。
当時、様々なプロジェクトに参加していた私はハードスケジュールだったが、彼に呼ばれれば必ず家に行った。
いつも通り彼の家に行くと、目に入ったのは見覚えのないペアのキーホルダーで
大学2年生の11月。この日も彼の家に行った。ベットの上で彼と向き合う形で抱きしめられているところで、寝返りを打った。 そして偶然目に入った、見覚えの無いペア物のキーホルダーに予感がした。
そして、12月。日用品の買い出しを命令されるようになった。「家を貸してやってるんだから避妊具を買ってくるのも当然だ」と言われた。彼からの扱いが酷くなってきたころ、偶然目にしたSNSの投稿に、彼と女性ものの衣服の切れ端が写っていた。
まさかと思った。私の後輩だ。彼女には、彼氏がいるはずだった。憶測の範疇を出ないで欲しかった。しかし、「彼女」は当時の交際相手と別れ、翌日には、私にとっての 「彼」 と付き合っていた。
今でも覚えている。その日は初雪が降った、と朝のニュース番組で話題になっていた。サークルに向かう途中に、「彼」から電話がかかってきた。11月頃から私の後輩と関係があったということ。そして今日、「彼女」と付き合うことになったということを知った。
寒さからか、心身が悲鳴を上げたのかは分からないが、震えが止まらなかった。どう応じたのかは覚えていない。電話を切った後、サークルの会場に向かう道が雪で白く染まっていて、
歩いても、歩いても、着かないという不思議な感覚に襲われたことを覚えている。
別れてからも律儀に彼との連絡を取る日々。心は悲鳴をあげていた
その後もプロジェクト活動があり何かと忙しくしていたが、「彼」から、毎日毎時間送られてくるメッセージと、深夜にかかってくる電話に律義に応対していた。
全てのプロジェクトが終わり、最後の会議が閉会したとき、立ち眩みがした。文字通り、死力を振り絞って電車に乗り、家まで歩き、玄関で倒れこんだ。
そして目覚めたのは、「彼」からの着信音だった。スマホの画面をつけると、時刻はもうすぐ深夜2時になろうかというところ。習慣で電話にでてしまった。悪寒で歯をガタガタと言わせながら、「ごめん、今ちょっと体調悪い」と何度も言ったことを覚えている。
それに対して「彼」は、「大丈夫?」という合いの手を挟みながら、「自分は悪くない」「お前とは付き合ってなかった」「あいつはお前よりかわいい」といつも通り弁明を垂れた。「許す」と言えば、この電話は止むのだろうか。素直に人に頼れる“かわいさ”があれば、私も「かわいい」と言ってもらえたのだろうか。
この瞬間、プツンと糸が切れたような感じがした。そして私は、彼の全ての連絡先をブロックした。サークル運営用のアドレス に、「彼」から「ブロックを解除しろ」とメッセージが送られてきたが、無視した。
周囲が結婚を視野に入れ始めた今だからこそ、自分のことを愛していこう
振られた理由、それは私が「彼女」のようにかわいくなかったから。私は一つでも「彼女」に劣る点は無いと思っているが故に、この理由で振られたことが不快だ。
今でも過去は呪いのように付きまとう。異性に対して感情を抱くことが皆無になった。まさに無味無臭。私は無意識に息を止めて、“臭い”をかがないようにしているのだろう。
最後に体を求められたとき、私は初めて拒否したが、彼が「来てくれないと死ぬ」と脅され、半ば犯されるようにして関係を持ったことがトラウマになっているのかもしれない。
周囲は、「結婚」を視野に入れ始めたこの頃。固定概念にとらわれず、独身で生きていくことも選択肢に入れてもいいとも思っている。まだ決めていないが、どうなるにせよ、自分を愛せない限り、誰からも愛されない。まずは自分のことを大事にし、愛していこうと思う。