高校2年生の春、私は人生で初めて告白して失恋した。

彼は男子サッカー部のエースで、漫画に出てきそうな素敵な男の子だった。中学時代には短期のサッカー留学をしていたくらいサッカーが上手くて、自然と周りに人が集まってくるような人望があり、勉強にも学校行事にもとてもまじめに取り組んでいた。

一大決心をして彼に思いを伝えて、彼女にしてもらえないか聞いてみた

彼に恋する女の子はとても多く、私も大勢のうちの一人だった。私はその大勢の一人から抜け出すために、彼の様な文武両道で人望がある女の子になるべく、一生懸命頑張っていた。

成績は良くなかったけれど、まじめで先生からは気に入られていたし、部活も一生懸命取り組み、生徒会活動なんかもしていた。彼の目に留まるように、彼の彼女にふさわしい女の子になれる様に、自分磨きに必死だった。

そして、高校2年生になる直前の春休みに、ついに告白する事にした。なぜそのタイミングだったのかはよく覚えていないけれど、一大決心をして彼に思いを伝えて、彼女にしてもらえないか、聞いてみることにしたのだ。そして、儚くもふられてしまった。

告白をした私に、彼はとても丁寧に、私と付き合うことが出来ない理由を伝えてくれた。彼がとても丁寧に向き合ってくれたからこそ、大切な青春の思い出となったことは、今でもとても感謝している。

そんな風に丁寧に対応してくれた彼とは異なり、私は彼女になれなかったことがただ悲しく、いつか彼に振り向いてもらえるよう、もっと自分を磨いていかなければとなんとも単純な振り返りをしてしまった。

社会人になり、初めて彼としっかりとしたコミュニケーションを取った

大学生になってから彼とは疎遠となり、彼を好きだった気持ちも時間が忘れさせてくれた。そして、告白してから10年弱がたって社会人になったとき、高校の同窓会で久しぶりに再会した。

10年たっても私がふられたことは、二人の間に確実に思い出として残っていて、最初はとてもぎこちなかったけれど、そのぎこちなさを紛らわすようにいろんな話をした。どんな大学生活を送ったのか、どんな仕事をしているのか。

その後も、一緒にゴルフに行くなど、ちょっとした交流が続いた。私には既にパートナーがいたので、その先には進まなかったけれど、私が望めば付き合えるところまで行けるんじゃないか、そんな風にさえ思えた。

実は私は、この社会人になってからの交流で、初めて彼としっかりとしたコミュニケーションを取った。彼に恋していた高校時代、彼と会話をすることはほとんどなかったのだ。というか、彼の前に出ると緊張してしまい、会話なんて出来なかったというのが正しい。

自分磨きの途中で、彼の前に出るのが嫌だった。素敵になった姿で彼の前に現れ、そこから彼との関係性を築きたい、それまでは存在を知られたくないくらいだった。

自分磨きを頑張る高校生の頃の私へ「彼の世界に登場しなきゃ!」

そんな風に自分磨きに一生懸命だった私は、実は彼の世界に1mmも登場していなかった。彼がとても丁寧にふってくれたこともあり、大切な青春の思い出になったけど、そもそもまともな会話すらしていない私は、彼女候補にも挙がっていなかった。

どんな姿だろうと、自分の存在を発信し、彼の世界に登場しなければ、関係性を築いていかなければいけなかった。

大学生になってから好きになった映画『何者』の中で「10点でも20点でもいいから、自分の中から出しなよ。(中略)100点になるまで煮詰めてそれを表現したって、そんな過程もう誰も追ってない」というセリフがある。

この映画は、就職を控えた若者の将来への葛藤を描いた映画だけど、高校時代の私にも伝えたい。「ずっと自分磨きに一生懸命だった私へ、それがあなたのふられた理由。自分磨きはやめて、そのままの自分で彼の世界に飛び込んでいかなきゃ」。