年収を上げたい。

2020年度、ものすごく浪費した。どんぶり勘定で計算して、給付金の7~8倍。コロナ禍により大ダメージを受けた勤め先では、冬のボーナスは大幅カットされ、来年のボーナスは予算化されていない。固定給こそ出ているが基本給が低いので、家に入れた金額と合わせたら、今年の収入はほぼ消えたことになる。

給付金8回分の用途は、補正下着と着物である。後悔も満足も入り混じっているが、なりたい自分の姿が明確になった。嬉しかったが、困りもした。

収入面も生活面でも「選手交代」のホイッスルが鳴るのはそう遠くない

私は物心ついた時からオタクで、漫画があればオシャレ着なんていらな~いという人間だと思っていた。ところがどっこい、社会人になって小金ができると、瞬く間にオシャレ沼にはまった。今までオシャレ道を通ってこなかったものだからプチプラをすっ飛ばし、貯金が許す限り補正下着と着物に金を溶かした。実家暮らしじゃなかったら死んでた。

今まで地方契約社員の薄給に甘んじていた私は、ベースアップの必要性に気付いた。以前の私なら、実家を出てもギリ死なないくらいの給料だったが、オシャレ沼の味を知った私だと死ぬ給料である。

コロナ禍で大打撃を受けた勤め先で、昇給など数年は望めまい。20代後半に片足突っ込んだ女は悟った。転職せねば。

転職+年収をあげたい動機は、もう一つある。コロナ禍で在宅時間が増え、親の老いをまざまざと見た。母は50代前半、父は年金をもらうちょっと前である。母はまだ元気だが、もともと体力のある方ではない。雪かきとかは、私が担当することが増えた。

父は自営業なので定年なくまだ働いているが、机の下にペットボトルを溜め込んでいたり、同じ話を繰り返したり、生活の端々に老いが見えてきた。本人の労働意欲はともかく、父の収入がそう遠くないうちに途絶えることは、覚悟せねばならない。

収入面でも生活面でも、親子の役割を交代する時期が近くなっていた。ピピー、選手交代ー。

キャリア採用のハードルは高く、「怠惰な自分」が足を引っ張る

しかし転職サイトを見ると、キャリア就職のハードルの高さにクラクラした。「実務経験5年以上」「エクセルの関数が問題なく使える」「簿記2級必須」「リーダー候補」エトセトラ…。

私は経理事務員として勤めているが、契約社員とはいえ簿記3級すら持っていない状態で、経理事務に採用された。"新卒”という価値がいかに高く、いかに自分の力不足をカバーしていたのか痛感した。

まぁエクセルは使えるようになればいいし、経験は積めばいい。簿記3級は働きながら取ったし、2級も勉強すればいい。

そんな前向きな私の肩を掴んで、怠惰な私がボソボソと囁いてくる「いいの? 今の会社は薄給とはいえほぼ定時で帰れて、土日祝休めるのよ。晩御飯を家族と食べれる、休みの日は着物を着て映画に行ける。有給も取りやすい。いいの? 外の社会はこんなもんじゃないらしいよ」と。

いつもここでブレーキがかかる。社会人になって小金がたまり、欲しい漫画を買って、アニメを見て、着物を着て、私はやっと私らしい"なりたい私”になった。

もし、残業の多い会社に転職してしまったら? ゴールデンウィークに週1日しか休めない職場だったら? 私らしくいられないんじゃないか。そんな不安で、オンライン合同説明会への参加登録すらできないでいる。

収入もプライベートも「全部」手に入れるため、自分を変えること

怠惰な私をなだめすかして、自分に足りないものをリストアップしていくと、そもそも今の職種でいいの? という気持ちも湧いてくる。経理事務の仕事は向いている気はするが、パソコンカチカチする業務に一生捧げていいの? という不安にかられるのだ。

やりがいというと軽い感じがするが、自分の労働力を自分にとって、価値のあるものに使いたいという欲求だ。自分らしい仕事につきたい、もっと高い給料がほしい、プライベートを大切にできる環境にいたい。これを全部叶えたい。

こんなこと学生のうちに考えておけよ! と、過去の自分に腹をたてたりしている。ちなみに全部叶えられる場所を自分で作ろうとする(起業など)のは、学生のうちに挫折している。

私に必要なのは、何かを捨てる覚悟だ。ぬるま湯につかるようなスマホタイムを捨てるとか、慣れた職場を捨てるとか、自分の決断に対して責任を取るという覚悟を決めなきゃいけない。でなければ、なにも得られないまま10年とか、20年が過ぎてしまうだろう。

今の日本は、地獄みが強い。扶養控除復活しないまま児童手当に制限がかかるし、消費税は上がり続けている。消費税がなかったり、3%だったりした時代がマジで羨ましい。

自分と家族を守るために、地獄を生き抜く術を身につけなければならない。そのための覚悟を決める……。でも、覚悟の決め方なんてわからない。ただ臆病な自分を変えるために、毎日自分の決めたことを少しずつやっていく。転職するにせよしないにせよ、自分の力になるはずだ。