最近わきまえない女や、同性婚訴訟など、ジェンダーに関するニュースに目を触れる機会が多いが、実際活でジェンダーに関して不快な思いや憤りを感じることはとても少ない。

これはきっと私が働いて1年が経とうとしている今の会社がとても自由度が高くて、かつお互いがお互いを尊重していて、アンコンシャスバイヤスと言われる無意識の差別的な言動を防ぐためのトレーニングもあるくらいに、みんなの意識がある程度あるからなんだろう。

だけど先日大学の後輩から就活の相談を受けていたとき、ほんの数年前、私も大学生で就活も考慮して色んなことに挑戦していたとき、そういえば心に傷を負ったことがあったとふと思い出した。

協力的な男性にキャリアの相談。返答は「彼氏ができたもんね」だった

私は1年間タイに留学していて、ちょうど3年生で卒業後のキャリアへの関心が強まっていたことや、タイでは日系企業や日本人の活躍が多かったことから、他の日本人留学生と協力して、定期的に現地で働く日本人からキャリアの話を聞かせてもらう機会をつくっていた。
私はぼんやりと自分のしたいことが決まっていながらも色んな業界、そして海外で働くことにもとても関心が強く、ありがたいことにたくさんの大人に協力してもらっていた。

キャリア=仕事ではなく、家庭を持って家事や育児と仕事のバランスを取ることの難しさも知りたいと思っていたところ、お子さんのいらっしゃる男性でとても協力的な方がいて、ご家族も合わせて留学中はお世話になっていた。そんな人から留学の終了間際にランチに誘っていただき、またキャリアの相談や今後の目標についてお話させてもらうことを期待していたのだが、その日は悪い意味で衝撃的な日になってしまった。

育児と仕事の両立について質問してみると、「なるほど、最近彼氏ができたもんね。」という返しだった。

確かに私はその少し前に恋人ができたばかりで、かつその人も面識のある人だったが、恋人ができたから急に考え始めたテーマでもなかったし、少しモヤモヤした。

追い打ちをかけるように「そういえば初めての彼氏だよね!どうなの?もうやったの?」という言葉。あまりに驚きすぎて息ができなくなるかと思った。

全く面白くない冗談。記者志望の友人に打ち明けると泣いてくれた

全く面白くないが、冗談のつもりなのか?
しかもお酒も飲まず、真っ昼間のランチなのに?さらにキャリアの応援をしてきた学生なのに?

気味が悪くて、見下されたようで、怒りが湧いて、でもそれよりも幻滅し、この人は金輪際関わらないからどうでも良いやと脳がシャットダウンした。そこからは何か本当に思った気持ちを伝えたら涙が出てしまいそうで、うやむやにして話を切り替えていたと思う。

家に帰るバスの中で、やっぱりあそこでちゃんと失礼だと伝えればよかった、別に泣いてもそれはそれで本当に辛いということが分かったのに、と後悔して、自分が情けなくて、そして何度もあの気持ち悪い言葉が頭の中で繰り返されて、1人で静かに泣いていた。

周りの友人や関係者はきっとあの人を尊敬しているだろうし、急に打ち明けるのもおかしいだろうと話すことができず、結局この話はその時の恋人以外には言うことができなかった。帰国して就活を終えたあと、たまたま記者志望の友人が就活ハラスメントを調査しているときに初めて恋人以外の人に話をした。その場で彼女は泣いてくれて、それだけで気持ちが救われた。

悪意がないから反論もできない。経験したから伝えたいことがある

ハラスメントの定義はとても難しいし、ハラスメントをする側に悪意がない場合がとても多いというのも分かる。きっとあの人も悪気はなかったのだろう。

だけど、特に就活ハラスメントや企業や団体において上下関係やパワーバランスがある際に、立場が上の人の言動というのは対等な関係性よりもずっと下の人が我慢をする可能性が強いのではないか。

さらに受ける側が女性、セクシャルマイノリティなど社会的に弱い立場にある場合、不快感を表すことに恐怖を感じるのではないかと思う。

もしあなたや周りの人で同じようなハラスメントにあった人がいたら、あなたは何も悪くないよと自分自身やその人に伝えてほしい。

もしハラスメントを受けたことに対して何も反論しなかったとしても仕方がない。だって既にとても傷付いた状態だったのだから。できることならどうか1人でもあなたを想ってくれる人に、話を聞いてもらってほしい。

私はこれからもずっとこのことを忘れないけど、一緒に泣いてくれた友人がいるということも、ずっと忘れない。