パパ、実はあなたに伝えたい想いがあります。ですが面と向かってでも、例えばこういう活字でも伝えたらショックを受けてしまうであろうから、ここに記します。そして、書いたことは墓場まで持っていく秘密にします。ここにそれを約束します。
パパ、あなたはヤンチャと包み隠せないくらいのワルだったそうですね
さて、お父さん改めパパ。あなたは、私にたくさんの隠し事をしていますね。今年で25歳になるので、さすがに世間を気にしなさすぎな娘も勘付いていますよ。ちょうど『今日から俺は!』のドラマの子たちが、当たり前にうじゃうじゃいたど世代のあなたは、ヤンチャと包み隠せないくらいのワルだったそうですね。
だったそうですね、で断言していないのは、母が親族と今も繋がりのある友人全員に口止めしていて、どんな悪さをしていたか、私に一切流れてこないようになっているからです。大学生になり思いました。「そこまで口止めされるなんて、父は(というかそんな父と結婚している母も)何をどれだけやらかしてきたんだ……」と。馴れ初めすら知らないの、だいぶヤバいなって最近思い始めましたよ。
授業参観で現れたあなたに、同級生が怯えてヒソヒソ話すくらいに強面なあなた。ですが、新聞などの押しが強い勧誘にはきっぱり断れないあなた。かと思えば、飲み物の提供が遅いと居酒屋のお兄さんにキレるあなた。すれ違う車に煽り運転しながらキレるあなた。
「ジャイアンみたい。ワガママで」そう言った私に、母は「言っておくけどアンタパパにそっっっくりだからね」。はっきり言って、めちゃくちゃショックでした。
高校生の頃、部活でとても人間関係に悩まされ、本当に本当に命を終わりにしようか毎日悩むくらい辛かった頃。涙を流して「学校に行きたくない」という私に、「悔しいならやり返せ」とあなたは言いましたね。正直、絶望しました。あの言葉は今も許せていません。この先もきっと許せません。
正月になるたびに祖母の家に帰省し、自分たちは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』を見ているのに、私や母、体が動いていた頃の祖母に酒を買いに行かせ、ずっと台所に立たせていたあなた。今も嫌いです。マジでさっさとやめてください。孫が来たからともてなそうとする祖父母の気持ちを利用しないで。
許せないこともあるけど、パパに感謝していることだってたくさんある
ここまでだけだと嫌いな気持ちや悪口だけですが、感謝はしています。居酒屋でビールが来ないだけでアルバイトにキレるような短気なあなたが、息子と娘が同じ教員にボコボコにされて帰ってきても「それで強くなるなら」と我慢したこと(私の気持ちは本当は止めて欲しかったけども…)。
上級生だけではなく、上級生の母親たちにも嫌な態度を取られている母親の姿を見ても、失礼な態度を一切取らず、同じ土俵に立たなかったこと。認知症になりつつある祖父母を心配して、病院やジムに連れて行ってくれていること(運動嫌いな祖父を叱りつけるのはやめてほしい、動くことから辛いんだよ)。
「高校の頃のあの言葉が嫌だった」と言ったのを覚えているのか、今職場での不満を口にすると「…そういうものだよ」と一旦受け止める表現をしてくれるようになったこと。高校を3日で辞めたあなたが、私も兄も大学卒業できるくらいたくさん働いてくれたこと。
神経質で過度の潔癖症なのに、ペットのチャコの最期、家に入れて介護してくれたこと。私が飼っている猫を連れて行った時も、なんやかんや可愛がってくれたこと。心の底で思ってるかもしれないけど「早く結婚しろ」とか「彼氏作れ」とか言わないこと。
今はまだ嫌だなと思うこともあるけど、もっと大人になったら許すかも
子供の頃「嫌だなあ」と思ったことは、今も「嫌だなあ、許せないなあ」と思い続けていることも何個かあるけど、大人になりわざと離れて1人暮らしをし、社会に混じって生きていく中で、どれだけ生きるのが大変か、そしてここに家族が増えたらどれだけ大変か、今更になって痛感しています。
全てを丸ごと愛することはまだできないけれど、もう少し大人になったらそんなことすら許せるのかもしれません。
いつもありがとう。帰省のたびに、お酒買い溜めしなくていいからね。私が買ったシャツ、仕舞い込んでないで早く着てね。ジャイアンの子供のちびジャイアンはあなたを反面教師にしつつ、もう少し大人になります。