「家事としての料理は…」と言った彼女。「男は仕事、女は家事」という家族にしたくなかった
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
みなさんこんにちは。
先日初めての確定申告を終えたどさんこつくしです。
自分の抱えているタスクを処理しきれずに書類作成を後回しにし続けた結果、申告期限数日前までノータッチで来てしまい、段取りの達人である妻の協力を得てなんとか提出に間に合わせることができました。
もしこれを読んでくれている方の中に「自分のやるべきことを順調に進められる」タイプの読者さんが居ましたら、ぜひそのコツを教えてください……!
さて、今回は妻がA面で綴ってくれた冷凍うどんにまつわるお話を読んで、感じたことを書き連ねていくスタイルです。
というのも、詩織が初めての手料理をある種の”覚悟”と共に差し出してくれたあの日、僕はそんな緊張の瞬間とはつゆ知らず、納豆に卵まで乗った麺つゆうどんを「用意させちゃって悪かったかな、でも美味しいな」なんて思いながら、ただただズルっと平らげてしまったのです。
まだ慣れていなかったお泊まり。優しい声に起こされて見慣れない寝床で目が覚める。自宅では無いことを認識するのに数秒掛かりながら、起き抜けの脳みそで詩織に声を掛けられたのだと理解する。
寝ぼけ眼を擦りつつ美味しそうな匂いにつられてリビングへ行くと、二人分のどんぶり。
「詩織がご飯用意してくれたんだ…!」
と、単純に喜びます。
当時はまだ詩織が「家事として行う料理が好きではない」ということを知らない頃だったけど、納豆だけでなく卵まで乗せてくれる辺りに、一杯のどんぶりへ付加できる栄養素として上限に近い配慮を感じ、有り難く思っていました。
それと今回の話を書く際、詩織に言われて思い出したことがあります。
冷凍うどんの日から数ヶ月後、同棲を始めた日の夜の話です。
その日の夜ご飯は詩織の提案で駅前のハンバーガー屋さんへ行くことになりました。
道産子には馴染みがない関東のチェーン店で、初めて入るその店にちょっとだけワクワクしたのを覚えています。
それぞれ注文を終えて、窓際のカウンター席に並んで座る。
確かお互いにハンバーガーを齧りながらだったと思います。詩織がおもむろに口を開きました。
自分は家事としての料理が好きではないこと、普段からこういうお店で夕食を取ることが多いこと、自分のご飯は自分で用意して欲しいこと。
受け入れてもらえるか不安げな様子で自分の気持ちを話してくれました。
過去の交際で「妻たるものご飯を作るべし」と頑張っていたのがかなりストレスだったこともあり、「もう以前の失敗は繰り返すまい」と同棲初日に打ち明けてくれたそうです。
僕との生活を始めるに当たって、無理をせず自然体で過ごすチャレンジをしようとしてくれたその行動が、「つくしとなら出来るかもしれない」と考えてくれたのかなと思えて、とても嬉しかった。
かくしてそんな告白を受けたつくしでしたが、当時の反応は「そうかあ、わかった。もし一緒に食べたい時は二人分作っても良い?」くらいの返答をした気がします。
先日改めてこの話になった時、詩織から「あの時あんな風に言われてどう思った?」と質問されたので、「『へーそうなんだー』って思った」と伝えました。
すると「日本で生まれ育ったら古いジェンダー観が身に付くのってある意味自然な気がするんだけど、つくしが『へー』って流せる価値観に育ったのはなんでなの?」と不思議そうに聞かれ、戸惑いました。
自分が完璧にジェンダーレスな思考をしているとは思えない。
「男は仕事、女は家庭」みたいな価値観があるのは当然分かっているし、ヒシヒシと感じている。
同世代のカップルを見てもそんな家庭はざらにあると思うし、実家もご多分に漏れず「男は仕事、女は家事」の家だ。
でも僕にとってその考え方は「できれば選択したくない家族の形だ」と断言できる。
今まで気にしたことが無かった価値観のルーツ、自分でも気になったのでウンウン悩みながら考えてみた。
まず一つ思い当たるのは元父親と元祖父のこと。
元父は気に入らないことがあれば、すぐに手をあげる人でした。
夕食に味噌汁が出なければ食卓ごと料理をひっくり返し、何かあれば怒鳴り、そして殴る。
母親が突き飛ばされるのを見ながら、何も出来ずにただただ恐怖していたことを今でも覚えている。
元祖父はこちらにニコニコした顔を見せた次の瞬間、怒鳴りつけながら元祖母目掛けてタバコや灰皿を投げつけるような人だった。
この頃から「父親(という概念)になりたくない」「父親になったら皆ああなってしまう」という朧げな忌避感があったのかもしれない。高校生頃までは成人男性が恐ろしかったし、今でも暴力気質な男性が苦手。(今の父親とは仲良しです)
あとは自分の親戚の影響もある気がする。(身内ネタばっかりだな)
記憶を辿る限り、親族で家事をやる男性は一人思い当たるくらいで、他はみんな全くと言って良いほど動かない。そしてその分ご飯の支度や掃除洗濯をせっせとこなすのが女性陣で、その様子を小さい頃から見てきたし、愚痴を聞くこともしばしばあった。
そういった苦労を知っているからこそ、自分が大人になった時 ”平気で苦労を強いる側” に回りたくないと思えたのかもしれない。
明確に「これだ!」という理由は見つからなかったものの、色んな要素が組み合わさって今の価値観が形成されているのかなと感じます。
ちなみに詩織の料理で一番好きなのは豚肉の生姜焼きです。(最近YouTubeで公開された動画でも熱弁している)
これが本当にすこぶる美味しい。
料理に限らず何事も、したい人がすれば良いし、したくない人はしなくて良い。
ただ、もしそれが生活する上で必要なことなら、思考停止で誰かに押し付けるのではなく、どうしたら良いか考えたり話し合ったりするのが大切だなと思います。
詩織と暮らしていると、こういう「今まで言語化してこなかった価値観」を発見できる機会が多くて楽しいのです。本当にありがとう、妻。
“性の話をもっと気軽にオープンに"をテーマに、 性にまつわる様々な情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌ。 身体の仕組み、感情や欲求との向き合い方、大切な人との付き合い方、自立について… 学校でも、社会に出ても誰からも教わることができない「性」にまつわるあらゆる問いに、 真剣に向き合い、具体的な知識を伝えるための一冊です。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。