お風呂上がりに父親に髪を乾かしてもらっていた。ドラマで父親狩りのシーンを観て、父がそんな目に遭ったらどうしようかと大泣きした。

幼い頃の自分は、父親のことを慕っていた。だけど、成長して自分の世界が広がる度に、父親のことを嫌うようになった。

父にとって子供は、他人に見せびらかせる「アクセサリー」と同じ?

私が大学受験をした時、父は私の受験校に興味を示さなかった。地元では知名度が低かったからだ。でも、合格して、実は地元の国立大と同じくらいのレベルにある大学なのだと知るや否や、友人に電話をかけて私のことを自慢し始めた。

「娘がいい大学に入ったんだよ」と、まるで自分の手柄のように。受験校にも、勉強に励む私にも興味を示さず、「合格おめでとう」の一言すらなかったのに、私を自慢話には利用するんだ、と失望した覚えがある。

あなたにとって子供は、他人に見せびらかせるアクセサリーと同じなのか、と問いただしてみれば良かったのかもしれないけれど、私はしなかった。父は“そういう人”なのだと見限ったからかもしれない。

先日もそうだ。有吉弘行さんと夏目三久さんが結婚したというニュースをTwitterで見て、私は声をあげた。「有吉さん、結婚したんだって!」「おめでたいことだね」と笑う母と、2人盛りあがっていたところに水を差す言葉。「有吉のことなんて興味ないわ」と父。

興味がないなら黙ってれば良くないか? そんな父も結婚相手が夏目さんだと知った途端、「有吉なんて熊野の田舎者なのに」「夏目と有吉じゃ釣り合わんだろ」と、どうやら父は、夏目さんが有吉さんと結婚したという事実がお気に召さなかったらしい。

出身地や経歴だけで、他人が勝手に「ジャッジ」を下すべきじゃない

私は父の態度がものすごく不快だった。そもそも出身や経歴はその人が辿った軌跡を表すもので、その人の人生なのだから馬鹿にすることではないが、父は他人の人生にとやかく言えるほど素晴らしい人生を歩んできたのかと思ったからだ。というか、「なんて」ってなんなんだ? なんで自分より下の存在かのように喋ってるんだ? 言葉の端々が気になってしまって、益々腹が立ってしまう。

それに、結婚は本人たちの問題であり、勝手に外野が釣り合う釣り合わないとジャッジを下すべきでもない。言いたくないけど私が父の真似をするなら、父は母に釣り合ってないんじゃないのって話だし……。

父はもう50歳を過ぎているし、ここから価値観や考え方を変えるのは相当難しいと思う。その年になってしまえば、指摘をしてくれる人なんてほとんどいないだろうし、父が指摘を素直に受け入れるとも思えない。合わないと思ったら適度な距離感で接するか、離れていくかで、周囲に残るのは同じような感覚を持った人達ばかりになるだろう。

人を美醜で判断するのではなく、内面を見て「魅力」を見出して欲しい

現に私は父と出来るだけ関わりを持ちたくはないし、「父」と呼びたくないとすら思っている。それでも何かを父に伝えるとするならば、その人の中身を見てくれと言いたい。「あいつは高卒だからダメだ」とか、美醜でランクをつけたりするんじゃなくて、内面を見て魅力を見出して欲しいと思う。

今まで当たり前のように周囲を肩書きや外見で評定していた人に、いきなり全てを変えろというのは難しいと思う。だから、まずは周囲の人から、好きだと感じている人たちの魅力はどこなのかということから考えてみてほしい。

私が父との間に作った溝はかなり深いが、もしも父が変わるなら、今後埋まっていくこともあるのかもしれない。そして、私も父に求めようとするなら、自分のことを棚に上げて指摘していると言われないように、私自身も人のことを簡単に判断しないようにこれからも気をつけて過ごしていきたい。