科学的に、娘は父のような男性に、息子は母のような女性を無意識に好きになる。そんなことを聞いた事があるだろうか?

私にとって、父は反面教師だ。でも、これは科学的にいえば不可能らしい。私は科学に抗おうと思っている。

父は家庭の中で威厳を保ちたい、いうなれば「亭主関白」のような人

私にとって、父はあまり関わりたくない人だった。小学2年生の頃に、父は単身赴任のような形で家を出た。今考えれば、それを機に私は父との関わり方を忘れたのだろうと思う。

その数年後に、家族みんなで一緒に住むことになったが、父は“自分が1番偉い、自分の言っている事が絶対的に正しい”と威厳を保ちたい、いうなれば亭主関白のような人だった。口答えすれば、怒鳴るような、そんな人だった。

私は、父と同じように自分の意見に自信があった。その正義感で父に楯突いていた事もあったが、それは無駄で分かり合えないと気づき、討論することを諦め、そうならないようにしてきた。

父について、あまり書き過ぎるのはよくない気がするので、私が結婚相手に求めているものを書いてみようと思う。その正反対な人間が、父だと思って欲しい。

知的、高給取り、地位がある、高学歴、穏やか、高身長(これは唯一父ももっていたもの)。ちなみに、この理想は社会人になってから確立されたもので、今私の理想への反論・批判は受け付けない。

私は「父のような人とは絶対結婚しない」と心に決めていた

父は高校生の頃に父親(私にとってはおじいちゃん)を亡くし、兄妹のために高校卒業を機に働き始めた。それからおよそ30年間以上、ずっと働いている。もともとは大手飲料メーカーに勤めていたが、バブル崩壊の影響でおそらくリストラにあった。詳しいことは未だに聞いていない。誰も話そうとしない。

ただ、私が感じ取ったこととしては、学もない父は再就職に苦労した。その時、家庭内は私のうやむやな記憶ではひどいものだった。私は自分の友人より少ない稼ぎの父が、家事を全て行ってパートでも働いている母よりも、家であんなに偉そうな振る舞いをしていることが不思議でしょうがなかった。それと同じくらい、母が父と結婚したことも謎だった。

母のように苦労する生活はしたくなかったし、父の傲慢な態度も好きじゃなかった。だから「父のような人とは絶対結婚しない」と心に決めたし、正反対の人と付き合うようにしていた。

そんなことを思っていた矢先、AIの発達やコロナで、世の中の情勢をがらりと変える出来事が次々に起こった。今後、AIに取られる仕事ができる……時代のテクノロジー化。それは取って代わる仕事をしている者にとって、とても恐ろしい時代の始まりだった。

そんな世界でどんな人が生き残れるのか。私が好きになる人は、良くも悪くも自分の仕事や自分の地位にプライドを持っていた。その仕事がもしなくなったら……彼らのプライドはどうなるのだろう。

想像した時、「きっと仕事を選り好みするだろう」と思った。「僕はこの仕事はできない」「もっとよい仕事を探そうと思う」などと、自分のプライドを守るだろう。もちろん、悪いことではないが、一度躓いたらなかなか起き上がれないような気がした。

家族のために自分の人生を犠牲にし、一生懸命働いてくれてありがとう

では、父はどうだろう。父の背中を見ていて、これは私が唯一尊敬できると思える父の一面で、それを伝えるのはきっと結婚式だろうと、自分が結婚するとき伝えたいと思っている言葉だ。

なぜここに記そうと思ったのかというと、結婚ができそうにないからだ。結婚式という場でないと伝えられない気がしてる。だから、せめてそう思った事だけでも残しておきたかった。

父へ
リストラされて、きっとプライドはズタズタだっただろう。「こんなはずじゃなかった」と、私以上に思っていたただろう。でも諦めず、前を向いて「つまらない人生だった」と言いながら、自分にできることはなんなのか考えて、仕事を見つけて、どんなに大変な仕事でも向き合って頑張り続けてくれて、ありがとう。

家族のために自分の人生を犠牲にして、できる仕事を探して、プライドなんてなしに一生懸命働いてくれてありがとう。家族のためにどんな仕事だってやろうとするその姿を、実は尊敬していました。