服もショッピングも好き。それでも、“お洒落”と言われない
私には隠されたコンプレックスが1つあります。それは“ファッションセンスがない”というものです。
じゃあファッションに興味が無いのか?と聞かれると、むしろその逆で、私はファッションがとても好きだし、服だって買い過ぎなくらいたくさん買ってきました。趣味はもっぱらウィンドウショッピングです。それでも私は着るものに常に不安を感じます。なぜなんだろう。
最初に説明しておくと、私はファストファッションしか買わない人生を送ってきました。理由はお金をそこまでかけられないというのがもちろん大きいですが、その他に“お得に服を買う”という快感にはまって抜け出せなかったからです。定価で服を買うことは滅多にないし、ハイブランドのものを購入した記憶はほぼありません。
服屋さんのレジを出て、いつも思うことがあります。
「よし、お洒落な服が安く買えた!今持ってる服と合わせれば色んなパターンで着られるし、もうしばらく服は買わなくて良い!」
って。でも半日経つとその高揚感と満足感はすっかり消え失せて、口癖のようなあの台詞が口から漏れ出てくるんです。
「服がない」
と。
詰まるところ、私は服をいくら買っても満足出来ません。こうなる原因は果たして私にファッションセンスが無いからなのか、それとも本当に物理的に服が足りないからなのか。
正直なところ私は悔しいんです。私だって中学生の頃から少ないお小遣いをはたいてファッション雑誌を買ってきたし、精一杯ファッションの研究をしてきたのに、いつも服を褒められるのは私じゃない別の子。いわゆる“お洒落番長”の立ち位置にいる子達。
まさかファッションの世界にも、自分探しの旅があったなんて。生き方の方向性を見つけるのすらままならないのに、人生ってほんと大変。そう思いながら、同世代のお洒落なインスタグラマー達を見て焦る日々を送っていました。
服を全て売り、「クローゼット改革」をして気付いたのは…
そんなある日、毎日SNSを見ながらコーディネートを試行錯誤する日々に疲れ果て、私は暴挙に出ました。なんと持っている服を全て売ってしまったんです。(その後は母の服を借りなくちゃいけなくてすぐに後悔したのですが。)
とっちらかったクローゼットも脳みそもゼロからやり直したかったんです。そして今度こそクローゼットを本当に自分にとって価値のあるものだけで埋め尽くそうと思ったんです。丁寧にコツコツと。
クローゼット改革最初の一着目として、白シャツを買いました。セールで1290円。安いしシンプルで使いやすいと思い即決しました。クローゼットに記念すべき1着目をそっとしまうと、すごく嬉しくなりました。よし、私のお気に入りコレクション第一号だ!って。
でも、次の日の朝起きると恐ろしい考えが頭をよぎりました。
「あれ、あの白シャツあんまりかも。もっと違うやつにすれば良かったかな」
って。早くも、“垢抜けクローゼット大作戦”が破綻しそうな警告音が脳内で鳴り出したので、慌てて気づかないふりをしました。
そして次の週、これまたセールで1990円のシンプルなスキニージーンズを買いました。とても気に入って買ったはずなのに、なんと半日後にはまたあの考えが浮かんできました。
「このジーンズ、よくあるデザインだし、別にここで買わなくても良かったんじゃないか。」
って。
そのときから私は徐々に気づいていきます。
「私は自分が買った服がそんなに好きじゃないんだ」
と。それはまるで付き合うまでは楽しいのに、いざ付き合ってしまうと途端に相手に魅力を感じなくなるあの厄介な現象にそっくり。
これからも、私だけの特別な運命の服を探し続ける
服を買うことと恋愛はとてもよく似ています。言わずもがなですが、夢見る私たちが運命の相手と巡り会うことはほとんど奇跡です。もはや運命なんてないと何度も諦めながらも、私たちがしぶとく恋をしてしまうのと同じで、自分と深い結びつきを感じ、その関係性が長く持続する服と出会うことはほぼ奇跡ですが、その運命的出会いを求めずにはいられないんです。
その相手は、もしかしたらものすごく高価かも知れないし、セールワゴンの底で今もぐちゃぐちゃに押しつぶされているかもしれない。私の親友が着ているものかもしれないし、それを譲り受けてリメイクしたものかも。もしかすると気づいていないだけですでにクローゼットに入っているかもしれないし、はたまたもう捨ててしまったかもしれない。
そう考えていくと、“お得に買う”ことにこだわり過ぎると、服に満足感を感じる機会が少なくなってしまうのかも。“安い服が悪”なのではなく、少なくとも服との関係性がちゃんとあるということが、自信を持って服を選び着るうえで必要不可欠のような気がします。
私はこれから、他の誰も持っていない特別なもの、手放せば二度と手に入らないと確信出来るその運命の服を探し続けたいです。その服を着た私はきっと誰よりもお洒落で、輝いていると思うから。