私に初潮が来たのは、小5の時だった。

その前に保健の授業で女子だけ集められ、人生で初めて生理用ナプキンというものを見たところだった。1人1個ずつ、パンフレットと一緒に保健室の先生から受け取って、使い方の説明を受けた。そうか、あれを使う時が来たのか。

休憩時間にトイレでナプキンを替えていた時、コソコソ話し声が聞こえた

小4の終わり頃から、同級生の中でも背の高くて大人っぽい子たちが続々と、キャミソールの下にスポーツブラをしてくるようになった。大体そういう大人っぽい子たちは、生理ももうその頃には始まっていた(後々、中学に入ってから実はそうだったと教えてくれた)。

見た目が幼く、背の順は前から2番目で、ちんちくりんの私は、まだブラジャーはしていなかった。体育で着替える時、ちらちらと横目で見て一抹の憧れを抱いていた。そんな私に2次性徴のトップバッターで来たのが、生理だった。こんな私でも、大人の女性や同級生の大人っぽい子たちに一歩近づいた気がした。

ある日、私が休憩時間にトイレの個室でナプキンを替えていた時。扉の向こうに数人いる気配を感じた。コソコソ「な、聞こえた?ガサガサって」「聞こえた!ほんで、ちょっと臭いもする!」「あの子、生理始まってんや」と話し声も聞こえた。

どうやら同じクラスの中くらいの背で、まだ生理始まってない女子たちだ。彼女たちは興味本位で、私がナプキンを袋から出しショーツに貼り付ける音を聞き、私の生理の血の臭いを嗅いでいた。どうも自分たちより早く生理が始まった私が気に食わないらしい。

なんて奴らなんだ。屈辱的だ。どんなに静かに替えようとしてもガサガサ多少の音はするし、臭いは漏れるし。私も何でこのタイミングで、生理が始まったか分からないし。

そもそも、他人がトイレしているのを外から聞いてるなんて、変態にも程があるわ。私は深呼吸をして用を済ませた後、水を流し勢いよく扉を開けた。彼女たちは「逃げろー」と去って行った。

大嫌いな夏は生理が始まり、貧血が激しく熱中症になり地獄と化した

手を洗いながら、私はボーっと考え事をしていた。あいつら、アホやな。保健の授業で個人差あるって言ってたやん。私だって、まさかブラジャーするより先に生理来るとは思わんかったわ。

ま、そんなこと微塵も考えられへん奴らが子どもやねんな。私はあいつらとは違ってオトナやから。てか、逃げる時に「逃げろー」って叫んで逃げるとか、ほんま子どもやわ。私は教室に戻って、その日の残りの授業を平然と受けた。放課後、先生に事の顛末をチクった。

生理が始まってから、大嫌いな夏はさらに地獄と化した。生理の日は特に貧血が激しく、よく熱中症になった。私が小5から高3だった2000年代後半~2010年代前半、公立学校の普通教室にクーラーはまだ設置されておらず、扇風機2~4台で暑さを耐え忍んでいた。その間、何度授業中に倒れただろう。

その第1回目が、小5の夏だった。貧血と暑さのダブルパンチで頭がクラクラする。授業内容なんて全く耳に入らない。あ、視界が朦朧とする、と気づいたら椅子から私は転がり落ちてた。

ふと我に返り、のそのそと座り直す。先生は気づいてないみたい。廊下側の一番端っこの席だし。周りを見渡すと隣の男子も後ろの男子も、問題解くのに必死で全然気づいてないみたい。一番後ろの席の女の子と目が合い、気まずくなって前を向いた。

生理の辛さを初めて同級生と「共有」できた時、私は救われた気がした

ちょうどチャイムが鳴って、私は一目散にトイレに駆け込んだ。あの時と同じ個室だった。心臓がやたらドキドキして、なかなか冷や汗が止まらなくて、死んじゃうのかと思った。数分経つと、少し気分が落ち着いた。教室に戻って、水筒の麦茶をがぶがぶ飲んだ。

すると、さっきの一番後ろの女の子が私の席に来た。その子は前に「あの子、生理始まってんや」と冷やかしてた内の一人だった。「大丈夫?さっき、めっちゃぐったりしててしんどそうで。心配やった。保健室行かなくていいの?」と言ってきた。

え? そんなこと思ってたの? てっきり私は彼女に、何か突然床に転がり出した変な子、と思われているとばかり考えていたから。「あ、うん。今は大丈夫。何か気分悪くなって変な汗かいちゃって。びっくりさせてごめんな」と私はあくまで平然と、明るく答えた。

そして、「実は今、生理で……」と打ち明けてみた。彼女は「そうなん?しんどいなー。私もこの前、始まってん!ほんまやってられへんよなー」と言った。そうか。彼女も生理始まったんか。おめでとう。私は「ほんま、辛いよなー」と言った。たったそれだけの会話で、何だか救われた気がした。生理の辛さを初めて同級生と共有できたから。

大人になった今でも相変わらず生理は重たいし、夏場は特に調子悪くなる。その度に、ふと小5の生理が始まった頃を思い出すのだ。