小さい頃から人を笑わせることが大好きで、中学3年生くらいまでは密かにお笑い芸人になるのを夢見ていました。しかも新喜劇女優の方。
今でこそ全国津々浦々からお笑い芸人さんは世に出てきているけれど、当時はまだお笑いの本場といえば大阪。大阪生まれ大阪育ちの私は、小さい頃から「笑い」の英才教育を受けてきました。
笑わせるのが……いや、私は人を笑かすのが、ほんまに好きやねん。

大学生になって、私の芸人魂は急に異物となってしまいました

憧れの人は藤井隆さんと辻本茂雄さん。特技はノリツッコミとモノマネ。隙あらばボケたいし、ボケてる気配があればツッコみたくなる。
たまに天然でボケてしまって、上手に拾ってくれる人がいたら、その日は寝るまでご機嫌。
高校までの同級生はみんなノリツッコミさせるまでの振りが名人芸なうえ、クラスに1人の割合で抜群にツッコミの上手い子がいました。実に良い環境ですね。

それが大学生になると一変。同級生のほとんどが地方から来た子で、私の芸人魂は急に異物となってしまいました。
身体を張ってボケても上手にツッコンでくれず、挙句には引かれたり。たまにツッコンでくる人がいても、ポイントがズレていてなんだか間も悪い。逆に、本気か狙ってかわからないボケをかましてくる人にはツッコミし辛いし、ツッコンでみたら「え?今の何?」と言われたりも。
最初のうちはその状況が受け入れ難かったけれど、段々と慣れてしまって遂には私もボケもツッコミもしなくなりました。

ライブを見て「好きな人が出来たら、一緒に来れたらええのにな」

それでもお笑いは大好きで、土曜日は必ず新喜劇を見て、たまに劇場に足を運び「笑い」を補充していました。
もし劇場で生で漫才や新喜劇を見たことがないなら、連れて行ってあげたいものです。実際に見てお笑いを楽しむのは、テレビで見るより何倍も面白い。
しかも早めにチケットを買うと前から数列目の座席から見られるから、その臨場感たるや病みつきになること間違いなしなのです。

だからお笑いライブを見ながら、「あ~好きな人が出来たら、一緒に来れたらええのにな」としばしば思いました。けれど私は、ツッコミの腕前で気持ちよく話せる男の人に出会ったことがありません。

こないだ出会った人なんて酷かった。オチのない話をダラダラと話し、虚栄や意地を張って実か嘘か分からないことを言い、ボケてんのかと思ってツッコンでみたら「バカにしてる?」と不機嫌になったりする。その度に「しばいたろか」と心の中で毒づいていました。
さらに「お笑いが好き」だということへの情熱が半端ではないために、にわかお笑い好きの人とは、そもそも話を合わせられないのです。
「千鳥好きだよ」
「よく出てますもんね」
「あれなんだっけ、ノブのギャグ」
「大脇毛じゃい、ですか?」
「え?」

「この人ええなぁ、一緒にいてて居心地いいわ」と思う人はみんなゲイ

自分でもバカらしいが、こんな会話になると東京進出前に大阪のテレビでよく言っていたギャグを出してきてマウントを取ってしまう。そしてそのあとの反応で、気が合うか否か判断してしまうのです。
「そっち!?クセが強いの方じゃなくて!?」と来たら狙い通り。
「何それ?」と来たら、もう彼への興味は失われる。また意外なのが返ってきたらちょっと好きになってしまうけれど、何故かそうやって返してくれた人は、全員ゲイでした。
最近になって気付いたことなんですが、私が「この人ええなぁ、一緒にいてて居心地いいわ」と思う人はみんなゲイ。
おそらく彼らは私を恋愛対象か否かで判断するのではなく、人として接してくれているから一緒にいて居心地いいのだと思います。しかしそんな彼らとは恋なんか発展しないし、するわけもないのです。

結局私は、相手に高いコミュニケーション能力を求めすぎていたんでしょう。私自身も緊張していたら上手に話せないのに、相手のその気持ちを推しはかれないらしい。
ボケとツッコミの関係には、愛と信頼が必要不可欠。今後はそんな関係を築けるような人に出会えたらいいし、いつの日か愛を持って壁に投げつけられたいものです。