「結婚式なんだけど、コロナで延期することにしたよ」
女友達からのLINEにホッとする最低な自分がいた。
28歳にもなって、友人のお祝いごとを素直に喜べないのではない。ご祝儀を払いたくないからでもない。
なぜか、行きたくない。
「そっかぁ、残念だね。でもまた延期しても招待してくれたら嬉しいな」
なんて上辺の返信をした。内心は、回避できたとすら思っている最低な自分にうんざりする。

コロナでに狭くなった交友関係は、友人や会社だけでなく恋人もそう

コロナで私の交友関係は更に狭まった。
あまり仲良くない友人とは「また今度にしようか」と避けるようになり、会社の飲み会なんてもってのほかで、オンライン飲み会ですら通信が重いと嘘をついて離脱したこともある。
私はコロナを言い訳にたくさんの人間関係からわざとらしく、そして堂々と逃げた。

恋愛においてもそうだ。
コロナが流行し出す直前に付き合い始めた4つ年下の彼氏がいたが、ステイホームが叫ばれるようになり、自然と家で過ごすことが増えた。
彼とはマッチングアプリで出会った、久しぶりのちゃんとした恋らしきものから発展できた恋人だったので、一緒にいるだけで楽しかった。でもいつしかその過ごし方に飽きている自分がいた。
仕事のことや友達のことなど、聞いて欲しい話もたくさんあったと思うが、いつからか彼の話を聞くばかりになっていた。
ふーん、へー、そうなんだ、と退屈そうに返事をするようにもなり、私がそんな返事をしても彼は構わず話し続けた。

「コロナだもんね」を言い訳に、別れる日を延期しているだけの関係

私の家に当たり前のように通い、子供のように今日あった出来事を語りまくる彼を見て、「そっか、この人は私が好きなんじゃなくて、年上の女と付き合ってみたかっただけだ」。
そして同じように私自身も彼のことが好きなわけではないことに気づいた。
周りが結婚していくことや、年齢的な焦り、コロナで他に出会いもないしと自分に言い訳をして私たちの交際はなんとなく続いた。

好きじゃないから喧嘩もしなかった。
好きじゃないからどうでもよかった。
だけど、好きじゃないから居心地が悪かった。

そしてまた年末、東京は再度の緊急事態宣言。
その頃にはもうお互いに「出かけられないなら家で会おう」とも言わなかった。
会話もなくなっていた。LINEの返信もしなくなり、ただ別れる日を延期しているだけのような日々だった。
そして年が明けたお正月、急に思い立って私から別れを告げた。当たり前のように彼はそれを受け入れた。
その反応に少しむかついたが、これでよかったし、遅いくらいだった。
私たちは会える距離にいるのに1ヶ月以上会っていなかった。そしてそれを「コロナだもんね」と言い訳できる状況があったから、別れる手続きから逃げていた。

人間関係から逃げたくせに、関係性の薄さに自分の価値をも知った気分

別れを告げたのは自分だったのに、いざ別れると誰にも会わない生活の孤独さに拍車がかかった。あぁ結局誰からも求められていない人間なのだと嫌気がさした。
そして、彼もLINEの連絡先ひとつ消してしまえばもう2度と繋がることもない関係であったことに呆然とした。共通の友人もいないので、いわゆる「風の噂」で彼が今どこで、どうしているかもこの先知ることもないのだ。
そうはいっても私たちは恋人として、時には将来の話をしたりして1年近い年月を過ごしてきたのだ。だというのに、あっけなく急に何事もなかったかのように消え去った。
結婚式に誘ってきた昔の友達と違い、もう2度と何かのタイミングで交わることもないのだ。過ごした時間の無意味さすら感じてしまった。

面倒な人間関係から簡単に逃げたくせに、その関係性の薄さに自分自身の価値をも知ったような気持ちになった。
そしてそれに気付かされたのは、気づかせたのは自分自身だった。

面倒と思っていた人間関係から逃げ続けたツケが回ってきたような孤独感が、どっと襲ってきて抜け出せなくなった。