わか、久しぶり!元気?
ことの始まりは、元彼からの一通のメッセージだった。

別れて正解だと思った、言葉やお金の価値観も違う元彼から連絡がきた

6年前、社会人になるのを機に、私は恋した彼に別れを告げた。
私が恋した、だらしない人が元彼である。
元彼はずいぶんひどい人だった。物理的な暴力は振るわなかったものの、言葉の暴力は数え切れないほどあった。バカ、アホ、汚い、死ね、何度言われたか分からない。聞き流そうと努力したが、好きな人に言われると自然と傷ついた。

でも、相手は突発的に口に出てしまう人だった。言葉の重みを軽んじている。だから一時の感情で暴言を吐いた。言葉を選びながら話す私とは対照的だった。
一回り年上の元彼は、大学生の私に今月お金ないから……と数回お金をせがんだこともあった。

私が大学の授業が忙しく、
「あまりバイト入れてないから5万や10万は貸せない……」
と言った。すると、「殺す気か!」と言われた。
大学生の私にとっての5万や10万は大金だった。しかも貸してほしいとお願いする側からの「殺す気か」はもう怒りを通り越して呆れた。

言葉の価値観もお金に対する価値観も違った元彼。
大事にしてくれることもあったが、私の生活の妨げになっていることも多かったので、人生の節目で別れを告げた。

そして私は新しい彼と付き合うようになった。
おおらかで優しくてくまのプーさんのようなのんびりした人。私に対する暴言はなく、お金を貸してほしいなんて1度たりとも言ったことはない。むしろ買ってくれるような人。
別れて正解だったと思った。新しい彼と新しい生活が始まり、それに満足していた。
そんな中、別れて5年……ふった元彼から連絡が来た。

終わらせたはずの恋なのに、「嫌いにはなれない」と思ってしまった

恋はあの時終わった。
恋はあの時終わらせた。

でも、元彼からのメッセージ、通話での元彼の声を聞いた時に感じた。
あぁ……私、この人のこと嫌いにはなれないな。
私の恋は終わったはずなのに……メッセージと声だけで引き戻されそうになる。恋の偉大さを痛感した。

元彼は、ふった時よりもずいぶん精神的に大人になっていた。
「わか、ごめん。わかのおかげで、いろんなことに気づけた。わかと出会わなかったら気づけなかった大切なことがいっぱいあった。
わかのおかげでお金の大切さも、人の大切さも、言葉の大切さもいろんなこと学んだ。
わかがくれたもの、ずっと大切にする。もらった物ももらった気持ちも全部全部、俺の宝物なんだ」
元彼は、私に一つ一つ噛み締めるように話した。

ずるい彼からの言葉。ふとした瞬間に元彼のことがよぎるように…

ずるい……。今さらそんなこと言うの。
私の恋は終わったのに、そんなこと言われたら揺らぐじゃない。
それから私は、ふとした瞬間に元彼のことがよぎるようになった。

テレビ番組で流れる松任谷由実やDREAMS COME TRUEの曲。
私よりも世代の少し前の懐かしの曲で、耳に入ると、彼とのドライブを思い出す。元彼の車で繰り返し流れていたなぁ。

何度も足を運んだ地元の水族館。
古くなって名前が変わっても、彼と交わした他愛もない会話がいまでも頭の中に残っているなぁ。
古いアニメ映画。

教員を目指すと口にして、学校ものの切ない映画を一緒に見た元彼のアパート、あの日は映画と同じ雨だったなぁ。

元彼と結婚する気はない。
でも、私は元彼のことを忘れることはできない。
今でも見てしまう、彼の車が去る瞬間。交差点を曲がるところまでずーっと目で追ってしまう。
元彼のようにDREAMS COME TRUEの「愛してる」のサイン、ハザードランプの合図があるのではないかと。