2011年2月某日、高校受験合格発表。
これから始まる高校生活を想像しながら結果を見に行った。
自分の番号を確認し、正門に表示された数字の中から自分の番号を探す。
あれ、受験番号は何番だっただろうか。
何度も受験票を確認し、掲示板を確認した。

私は中卒になるのか。高校受験不合格だった私の絶望の日々が始まった

結果は、不合格。
お前はくるな!と言われた様な気がした。
震える手で、母に電話をかけた。
「受験、ダメだった。落ちた」
すると母は、「うん、そんな気がしてた」。

さて、これからどうしようか。
私は中卒になるのか。
将来に夢も希望も持てない絶望の日々が始まった。
母は、うつ病を発症しており、私は制服を着て学校に向かう友達に会いたくないから、なるだけ外出はしたくなくて、夜になるまで布団の中で1日を過ごした。
正直、その頃の記憶はほとんどない。

それから4ヶ月が経ち、そろそろ来年に向けて受験勉強をしなきゃなぁとぼんやり考えていた頃、母の旧友が地元に帰ってきているとのこと。
母は、旧友に会うべく久しぶりに化粧をし身なりを整え、近くのファミレスに向かった。

「和歌山に引っ越すよ!」旧友に会った母は帰ってくるなり私に告げた

18時を過ぎた頃だろうか、母が帰ってくるなり、
「和歌山に引っ越すよ!」
えっ……?この数時間に何があったの……?
頭にはたくさんハテナが浮かんで、何が何だか分からず私は頷くしかなかった。

1日が経って、和歌山行きに向けて準備を始めた。
あんなに引きこもっていた私たちが朝から動いている。4ヶ月振りに浴びる日の光は眩しかった。
懸命に行動する母の姿を見て、あぁ本気なんだと実感した。私も劣等感でいっぱいな日々から抜け出せるんだと安心し、私の暗くどんよりした道に一寸の光が刺した。そんな気分だった。

それからはトントンと進み、いよいよ、引っ越しの日。
未練なんてないさ!希望に溢れた未来に向かって行ってきます!と生まれ育った故郷に別れを告げた。

歩みを止めたからこそ出会えた友達。高校受験に落ちて心からよかった

2012年4月、1年遅れたが無事に高校生となった。
華の高校生活のスタート!とは言えず、周りとは違う喋り方で自分をどう表現したらいいか
分からないし、周りの子より1歳年上だとバレたくない思いが強く、最初の頃は高校を辞めたくて仕方がなかった。

このままじゃダメだ!と自分を奮い立たせ、まず自分を知ってもらおうと思い、方言を恥ずかしいとは思わないように、周りに話しかけることを心がけた。
不思議なことに、心のドアを開けると自然と向こうもドアを開いてくれるもので、あっという間に仲良くなれた。最初からこうするべきだったんだなと反省した。
それからと言うもの、毎日学校に行くのが楽しくて友達に会うのが楽しくて、何不自由ない高校生活を送ることができた。

ふと考えることがある。
もし、私が地元の高校に受かってたとしたら、この人たちに出会うことなんて一生なかったんだろう。
あの時、高校受験に落ちて心からよかった。
心からそう思う。

あなたの進むべき道はそこじゃないよ。
ちょっと休憩して、しばらくゆっくり休もう。
そう神様に言われて、歩みを止めていたんだ。

歩みを止めたからこそ出会えた人たち、変われた自分。今の自分がいるのも、あの月日を乗り越えたからだ。
歩みを止めることは成長を止めることではない。
立ち止まってゆっくり休んで考えてまた立ち上がって一歩踏み出せば、未来は変わる。