その時まで、私はKのことなんてもう好きじゃないと思っていた。
だからKの恋を応援しようと思っていたし、そういうふうに振舞っていた。
けれど私は自分の気持ちに無自覚に嘘をついていた。そしてそのことに気づいてしまった。

Kへの片思いを封じ込めた。自分に暗示をかけて、本心だと思い込んだ

半年ほど前、まだKに片思いをしていた頃、Kがサークル内の別の女子のことが好きなのを知ってしまった。
私はその子とも仲が良かったし、お似合いな二人を応援したいと思った。そして自分の気持ちを封じ込めた。

追いかけ続ける自分にもう疲れていたのもある。気づかないうちに頭の中はKのことでいっぱいになって、ほかのことも手につかなくなっていって、そんな自分にいら立っていた。

Kへの気持ちを断てば自分はまた軽快になるし、Kと友達も結ばれてみんなハッピーかもしれない。
そんな考えが私の片思いを封じ込めた。自分にKのことはもう好きでないと暗示をかけていった。暗示はそのうち偽の本心になり、自分の気持ちも気づかないうちに本心だと思い込んでしまった。

久しぶりKと2人で会話。自分の本心に気付き、涙止まらなくなった

半年後のあの日、私は久しぶりにKと二人で話す機会があった。お互い引退が近いことを思っていたからか、いつも以上に会話が弾んだ。

そしてKが少し離れた瞬間、私はうかつにも「もっと一緒にいたい」と思ってしまった。そして自分の本心に気づいてしまった。
「なんだ、やっぱりまだ好きじゃん」と。

それは私にとって思わぬ出来事であった。その時私には、私を誘ってくれている男性が2人いて、その人たちといい感じになりかけていた。まさか自分がまだ前の恋を引きずっているなんて思いもよらなかった。

帰り道、半年前によく聞いていたラブソングを聞いて涙が出てきた。自分の気持ちに嘘をつき続けていたことに気付いたら涙が止まらなかった。その晩、布団の中で私は一人で半年分泣いた。

泣いたら心は意外にもすっきりした。心のどこかに残っていたしこりが消えたように感じた。自分の本心とようやく向き合って、それを認めてあげることができた。残ったのは、いい感じになりかけている男性との関係だった。

Rと付き合うことに。Rにはまだ恋愛感情で「好き」と伝えていない

その時、私は2週間で2人のうちどちらかの男性を選ばなくてはならなかった。私は直感に従って、自分と合いそうなRを選んだ。Rは、私の理想の恋人像とは違ったけれど、きっと穏やかでいられるだろうと思ったのが理由だった。

Rとの関係が進むにつれ、Kの影はどんどん薄くなっていった。頻繁に夢に出てきたKは出てこなくなり、代わりにRが夢に出てくるようになった。私の中で、夢に出てくるというのはその人に自分が好意を持っていると判断する一つの基準である。

Rはその泣いた晩から3週間後、私に告白してきた。恋愛感情まで達してはいなかったが、「好きになれそうだ」という直感で私はRと付き合うことを決めた。
1つ決めたことは、自分の気持ちを隠さないことだった。Rとの関係で、私は初めて追われる恋をした。こんなにも無条件に自分を想ってくれる存在がいることに私は驚いた。
Rの気持ちには応えたい。けれども、あの夜を超えて私はもう自分の心に嘘はつきたくなかった。

だから、Rにはまだ恋愛感情で「好き」と伝えていない。愛情表現が足りていないのは自覚しているが、嘘を言ってしまえばそれは偽の本心になってしまう。そしていつかそれに気づいたときにはもう戻れないところまで進んでしまっている。

それなら時間をかけてでも、本心を積み重ねたほうがいい。それならきっとどんな結末でも満足のいくものになる。

いつかRに好きだと言えること。それを目標に、私は今日もRとデートをする。