例えば、もうひとりではどうしようもない夜に、ひとりコンビニで月を見上げること。例えば、知らない街の片隅で、彼氏じゃない彼を待ちながら3時間経過してしまった夜。会いたい人がいるはずなのに、誰に会えば良いのか分からずに彷徨う夜のひとりドライブ。
誰が悪で誰が善なのだろう、とか、正しいはあるけど間違いはない、とか、心の中は大洪水なのに涙は溢れることはなく息が詰まる、そんな感じ。これは私から貴方に対するラブレターです。
彼の事は大好きだったけど、彼と付き合うという選択肢はなかった
好きなものを好きというだけで、好きが薄れる気がする、という体験はもう何十回もしたけれど、それでも彼に対するその気持ちは今も永遠であると思う。好きであるが故に彼を傷付けたくなる。
恋人とも友達とも、はたまたセフレという関係でも言い表すことの出来ない、親友のような、或いは戦友のような存在の彼と、セックスを終えた後、二人ベランダで煙草を吹かした夜、「これからの人生の為に、これまで積み上げてきたものを全部洗い流すんだ」と彼は言った。
「ふーん、そっか」と私が言うと、彼は「君はどう思う?」と尋ねてきたので、私はビックリして言葉が出て来なかった。これまで私と彼の間にそのようなやり取りはなかったし、お互いにお互いの感情に干渉することがなかった。突然の事で言葉が出てこなかったので、沈黙が少しの間流れたような気がする。
彼の事は大好きだったけど、それでも彼と付き合うという選択肢はなかった。状況がそうさせたのかもしれないけれど、私たちの場合は感情がそうさせたのだと思う。
ベッドの上で煙草を吸いながら笑いあった彼との過去は、今でも幻のよう
セックスという行為を最初に彼とした時、「貴方のこと、好きだったよ」と私は言った。彼は「僕は君のことが好きだな」と言った。彼と私との間ではそれだけだった。
飲みに行った夜に彼が迎えに来てくれるのは特別嬉しかったし、一緒に夕日を眺めながら街を見下ろすのも良かったし、朝日に照らされて家まで帰る道のりも楽しかった。けれど、私はクラブに行ったり、ワンナイトを繰り返し、彼も彼女を作ったり、別れたりした。
ホテルでは二人ベッドの上で、煙草を吸いながら気持ちいいねと笑いあった。彼との過去は、今でも幻のようで滲んで光って眩しい。
「私は貴方が何に悩んでどこにいようともここにいるし、貴方の正しいという道に私が入り込むことはないけれど、間違えてるとも言わないよ。だけど私は貴方の味方でい続けるんだろうなと思う」と言った。彼は「そっか。僕は君のそういう強いところに憧れるんだ。ありがとう」と言って微笑んで、静かに部屋に戻った。
素直で優しくて柔らかく、トキメくのが「愛」なのかもしれない
永遠に来ない別れと、永遠に別れることはどちらが素敵だろう。彼とはもう二度と交わることはないと思う。
誰かを傷つけたり、傷つけられたりする事にはもう飽き飽きなのだけれど、素直で優しくて柔らかい、あのトキメキを忘れることはできない。愛は全てを解決しないと語ったあの歌手も、愛されたいと叫びながら歌ってた。私は私のこと以上に好きにはなれないけれど、この世界は愛で溢れていると思う。
貴方にもいつかそう思えるような夜が訪れますように。