私の就職活動は、まず部屋を模様替えすることから始まった。
私が就活を始めたのは2020年6月。現在も世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスに、政府も、医療機関も、大学も、友達も、私も、世界全体が先の見えない、正解がわからない日々に怯えていた。
スタートからゴールまで対面で終える先輩方が多い中、私の就活はスタートからオンラインだった。

オンライン面談にもあるマナー。本当に必要なの?と思ってしまった

例年大学で行われる合同企業説明会もなく、実感が持てないままぬるりと始まった就活に、私は焦りを感じていた。焦りに背中を押されつつ就活サイトに登録し、各企業の説明会や就活マナー講習会にエントリーをした。
オンラインで行われたマナー講習会では、身だしなみや入退室などよく耳にする内容を説明した後にオンライン面談について語る場面があった。

「背景は生活感を感じない白い壁が好印象です。バーチャル背景は好ましくないため使用を控えましょう」
「顔色がよく見えるように卓上ライトを買うことをお勧めします」
「話す人が自分か相手かで、PCの画面かカメラを見るか変えましょう」
この文を読んでいる貴方は、これらのマナーにどう感じるだろうか。本音を言ってしまうと私はこう感じた。
「これって本当に重要なの?え、まず、誰が決めたの?」

ここで話は冒頭に戻り、疑問を感じつつも私は部屋の整理を始め、ただ白い壁が写るスペースを確保したのだ。

お互いに経緯を表し、業務を円滑にするために「マナー」はあるはず

話は少し変わるが、ここでマナーの一種である「敬語」に関して私個人の話をしたいと思う。
私は基本的に自分の後輩に対してタメ口大歓迎というスタンスだ。私が人間関係に求めることは「お互いに人としてのリスペクトを持つこと」であり、そのことに敬語は必須ではない。現にタメ口で話してくれる後輩との会話でも、その随所で互いにリスペクトし合えていることを感じる。
その一方で、敬語を使っているものの、私のことを軽視していることが伝わる相手もいる。人間関係に必要なものは形ではなく、その中身であることを身に染みて感じる。

ここで補足を入れておくが、私は敬語や全てのマナーを批判しているわけではない。私の話は、お互いを知る十分な期間があるという前提ありきの話だ。
社会では社内外で多くの人と出会い、仕事をし、そのプロジェクトが終われば他人に戻る機会も少なくはないのだろう。他人に戻らずとも短期間でお互いを内面から理解し合うのは至難の業であると思う。

その時にお互いに敬意を表し、円滑に業務を勧めていく手段として、マナーは欠かすことはできないのであろう。
しかしそれと同時に、今、自分が手にしているマナーに疑問を感じることも少なくはない。

企業が見たいのは私自身?それとも、マナーをコピペしてきた私なのか

当たり前のことではあるが、社会の先輩方は就職面接におけるZOOMのマナーなど知らない人がほとんどだろう。現に就職先の人事の方に、こういう講習会がありましたという話をすると、失笑と共に「そんなこと気にしたこともなかった」という返事が返ってくる。それならば、私が学んだマナーは本当に必要だったのだろうか?
疑問を感じながらも頭に染み込んでしまったマナーは、今後も私の中に残り続けるのだろう。この、自分達の代しか知らないマナーを元に無意識に相手を判断していくこともあるだろう。

マナー、というものはお互いに敬意を示すことができるpositiveなものであるはずなのに、なぜこれができていない、あれができていないからあいつは駄目だ、というふるいにかけるかのようなnegativeなものになってしまうのだろう。
企業が見たいのは私自身なのだろうか、それともマナー本をコピー&ペーストをしてきたかのような私なのだろうか。
私がマナーとして意識しているものは世間一般的なのだろうか、そもそも必要なのだろうか。
私は将来、相手のマナーをみて、どのように考え判断していくのだろうか。
湧いた疑問は、就活中はもちろん就活が終わった今でも答えはでない。