小学校6年生の時、好きな人ができた。
相手は同じクラスの男の子。野球のクラブチームに所属していて、スポーツ万能、リーダーシップもあり女子からの人気もあった。
幸運にも彼も私のことが好きだということが友達越しに分かった。そしてある日、授業前にお手洗いから戻ってくると、机の中に手紙が入っていた。手紙と言ってもメモ帳くらいの紙だったが。
そこには「好きです。付き合ってください」の文字が。嬉しかった。
家に帰ってよく見ると、何度も消しゴムで消された跡が見えた。ピッタリな表現を書くのに悩んでくれたことが伺え、さらに嬉しくなった。
後日、その手紙に「いいよ!」と書いて本人に渡した。
彼の書くメッセージはいつも優しく、大事にされていることを実感する
こうして付き合うことになった私たちだが、小学生なだけに、特に二人で出かけたりすることはなかった。しかし、小学生ながらも彼はクリスマスプレゼントやお土産、ホワイトデーのお返しをくれた。しかも毎回手紙付きで。
今になっても覚えているのは、彼の書くメッセージが優しく、大事にされていることを実感したからだと思う。
そんな彼とも別々の道に進むときが来てしまった。進学する中学校は住んでいる地域的にギリギリ別だった。これからどうするかもろくに話さず、あっけなく卒業してしまった。
中学に入学してから一カ月ほどたったころ、私と同じ中学で彼の友達伝えで彼から手紙が来た。手紙の内容はこれからも付き合いたいというものだった。
私も好きだったが、当時お互い携帯は持っておらず、連絡手段は「手紙」くらいしか考えられなかった。新しい環境に身を置かれた状態で関係を続けるのは現実的に難しいと思った。
なかなか返事を出せずにいたら、もう一通手紙がきた。きっと彼は私が悩んでいたことを分かっていたのだと思う。「なんでもいいから返事ください」と書かれていた。
私は返事を出さなかった。いや、出せなかったのだ。はっきり「終わり」にするのが怖かったのかもしれない。結局、自然消滅という結果になった。
いつか謝りたいと思っていた私に届いた、彼からのフォローリクエスト
最低なことをした。いつか謝りたい。当時はその自覚がなかったが、数年たってその思いが強くなった。
高校生になり、親越しに彼が進学した高校の名と変わらず野球を続けていることを知った。
高校は共学だし、彼は背も高くて優しいから、きっと彼女もいて私のことは思い出すこともないのだろうと思った。
時は流れ、私は大学生になった。そんなある日、一通の通知が携帯に届いた。なんと彼からインスタのフォローリクエストが来たのだ。
目を疑った。色々な感情が湧き上がり、忘れかけていた思い出が鮮明に蘇った。
リクエストを返すとメッセージが来た。「元気??俺のこと覚えてる?笑」と。
手紙を出さなかったことを後悔していた私は、正直に謝罪した。すると彼は私が謝るのはおかしいと言い、自分が悪かったと送られてきた。どこまでも優しい人なんだと思った。
その後もやり取りが続き、度々連絡するようになった。そしてついに小学校のメンバーで集まることになり、私たちは8年ぶりに再会した。こんな日が来るなんて思ってもなかった。
「ちゃんと話せて良かった」
それが一番の感想だった。彼には尊敬する部分が沢山ある。今後は一人の良き友人として付き合えたらいいと思う。