現時点で暫定1位の後悔。先輩からのプロポーズを受けなかったこと

3年前の冬、最低でも週に1度は飲みに行くほど仲のいい先輩と初めて喧嘩した。
どうやって仲直りしたらいいのかわからず、悶々として注意散漫に仕事をしていたら、会社支給のパソコンに熱いコーヒーをこぼして壊した。それくらい動揺していたのだ。

喧嘩して3日後、「仕事終わりにガスト集合」と先輩からLINEが届いた。これで仲直りできるとほっとして、嬉しくて、一生懸命新しいパソコンの設定を終わらせてすっ飛んで行った。

席についてすぐお互いに喧嘩のことを謝った。これでまた楽しく一緒に飲める、とにっこり笑った私の前で、先輩はビールを一気に空にして、言ったのだ。
「君が自分の隣にいてくれたら自分はとても楽しいと思うし、すごく幸せ。君の笑い声を聞くために人生かける。君もだけど、君の家族も含めて幸せにするって約束するよ。だから、結婚して」

はっきり言おう。あのプロポーズを受けなかったことは、一生の中でトップ3に入る大失態で、29歳時点でぶっちぎり暫定1位の後悔だ。
顔はタイプじゃないし、体型ももう少し細い人の方が好き。先輩の女性関係の話を聞いても、面白がることこそあれ嫉妬なんて感情は欠片も湧かなかった。また、私には彼氏がいた。

下世話な話も何もかも話しすぎた私たち。幻滅されるのが怖かった

さらに、お断りした最大の理由は、言うなれば兄や家族のように慕っていた先輩と男女の関係になることへの凄まじい羞恥と、もし体をあわせてがっかりされたらという恐怖だった。
私たちはたぶん、話過ぎたのだ。もちろん真面目な話もしたけれど、お酒が入ると、とても男女の会話とは思えないような下世話な話もたくさんした。

だから、プロポーズをお受けするか迷っていたとき、先輩の過去の女性遍歴やさまざまな女性とのピンクな話の数々が蘇り、「先輩と私があんなことやこんなこと~」なんてことも想像してしまった。そうしたら、どうしてもダメだった。
「もしかして体の相性が壊滅的に悪いかもしれない。こんなはずじゃなかったと思われてしまうかもしれない」の気持ちがどんどん膨らんでいったのだ。先輩に幻滅されることがなによりも怖くて、それが「プロポーズをお受けします」の言葉を飲み込ませた。

でも、今思い返せば「先輩に会いたい、先輩と飲みたい、話を聞いてほしい」は常に私の中にあった。この気持ちをおおざっぱに言い換えると、すなわち「あなたと一緒にいたい。あなたとの時間が楽しい。私を知って」ということで、これは先輩がくれた好きと同じ好きだったんだ、と気づいてしまった。今さら。

うっかり言葉にしないように。私はここに先輩への気持ちを置いていく

「もしかして」「かもしれない」なんていう不確かで自分勝手な想像と不安で、好きという自分の気持ちを覆い隠したこと、なんて馬鹿だったんだろうと思う。最大の理由を告げずにお断りしたこと、なんて不誠実だったんだろうと思う。
先輩ならこんな不安、笑って一蹴してくれただろうに。そしてなにより、こんな風に今さら思い返して後悔している自分がとてつもなく情けない。さらには先輩への「会いたい、飲みたい、話を聞いて」が消えていない自分が、もはや滑稽にすら思える。

先輩は、私がプロポーズをお断りした後、精力的に婚活をして、すぐ別の女性と出会って結婚し、いまや2児の父である。幸せそうでなによりだし、これからもご家族皆様の幸せを願っている。ちなみに私は、当時から付き合っていた彼と婚約中の身である。
だから、何かの拍子にうっかり口が滑って気持ちを言葉にしないように、ここに置いておくことにした。

先輩のことが、大好きです。タイムマシンがあったらとこれほど願ったことはありません。