母さんにわがままを言いたいけれど、言えない。
それは、母さんの方がつらいとわかっているから。
それは、サンタさんか神様におねがいしないとむずかしいから。
けど、このわがままは膨らむばかりだから、このエッセイで叫びたい。

「ばばちゃんのすいとんがたべたい」
ばばちゃん、祖母の「適当」と言いながら調味料を計量せずつくるすいとん。
私が泊まりに行くたびに買っといてくれる椎茸をいれたすいとん。
「手伝う」と言ったのに、いつの間にか完成していたすいとん。
ばばちゃんのすいとんは計量してないから、どれくらい調味料を入れてたか分からない。椎茸に喜びすぎて、いつも他に何を入れていたか分からない。すぐ終わっていたから隠し味さえも分からない。
ばばちゃんが元気な時に聞けばよかったなぁ。ばばちゃんが倒れる直前までコロナでも会いに行ってたらなぁ。
ばばちゃんが倒れる前までは、母に「ばばちゃんと母のつくるすいとんは味が違う」とよく言っていた。この言葉ももう言えないな。
あのすいとんはいつもバイバイする時のハグ味。
あのすいとんはいつも悩みを聞いてくれるばばちゃんの声味。
懐かしい味ってしょっぱいとか甘いとかじゃない。
確かにあったばばちゃんとの思い出だ。