誰よりも厳しく口うるさい母。
昔からいつも忙しそうで、仕事ばかり。口を開けば「あれはだめ、これはだめ」。
兄と私が子どもの頃、一緒に過ごして身の回りの世話をしてくれていたのは祖母でした。母はいつも、子どものことよりも自分のことを優先しているんだと思っていました。

社会に出て、私も自分で稼ぐようになり、後先考えずにお金を使おうとしたある日のこと。
「お金にはずっと苦労したなあ。あんたたちには母親らしいことは何一つしてこなかったけど、働く姿だけは見せてきたつもり」と母。その言葉を聞くまで、母がお金に苦労してきたことにちっとも気づいていませんでした。

私から見た母の人生は、決して順風満帆ではありません。しかし、大変な時にも弱音を吐かず「これは人生の中で当然起こりうること。あんたみたいに弱かったら生きていけない!」と言う母。
30歳を目前にして、気持ちをストレートに表現しない母の、厳しさの中にある愛情や強がりの裏にある弱さがやっと少し見えるようになりました。
いつも自分よりも子どもを優先し、兄と私を守ってきてくれてありがとう。おかげで私も多くの人と関わり、少しは成長できました。たまには私にも頼って肩の荷を下ろしていってね。