「さとちゃん、今日お弁当持っていかなかったの?お母さん、悲しんでたよ」
夕方、部活から帰宅した私に姉が言った。
高校生の頃の私は絶賛反抗期で、親に何か言われると「うるさい」「あっちいって」などと口答えをしていた。
そんな中、ある日いつもの母親への反抗として1日だけわざとお弁当を持って行かない日があった。今思うとどんな理由で反抗していたのか覚えていない。

「お母さんが作ったお弁当なんて持っていくもんか。どうせコンビニで買えば良いし」

朝から母に反抗していた私は、登校時間に急かされるかのように家を飛び出した。その後テーブルにぽつんと置かれた母はお弁当を発見し、悲しんでいた姿を姉は見ていたのだろう。

姉に言われてから猛省した。せっかく作ってくれたお弁当。うちの母が作るお弁当はよその家と違って茶色が多いお弁当だったけど、母なりに毎日朝から早起きして作ってくれていた。
「お母さん、悲しい思いをさせてしまってごめん」
あの頃の私は、母に直接謝る事が出来なかった。

あれから10年、私は社会人となり、実家を出て今は東京で一人暮らしをしている。そして毎日早起きしてお弁当を作っている。
今でもあの時母を悲しませてしまった事、自分の行動に猛省した事を忘れない。
ときどき実家に顔を見せに行くと、「自分の家に帰る時持って行ったら良いよ」と笑顔で手料理を持たせてくれる。
私もいつか結婚して子供が出来たら、こんな温かい母になりたいと思う。