あの時言えなかった「悲しいこと」があります。

「うちの子、本当にダメで……」
ご近所のママ友に話のネタとして言う私のお母さん。
小学生の時、登校班の集合場所での出来事。もちろん私に丸聞こえ。
私は「自分はダメな子」と周りにも、私のことをよく知らない人にもそう伝えられてきた。私はこの時間がとても嫌いだった。気にしていたらプライドなんてズタズタ。

ある時、あまりにひどい言われようで、泣きながらやめてとその場で抗議した。
「ご近所さんに、『うちの子すごいのよ』なんて言うわけないでしょ。そんなことで腹を立てるなんてどうかしてる」
ちがう、ちがうよ、お母さん。私は自分のことを自慢してほしいんじゃない。私のダメなことを話のネタにしているところ、それで私が傷ついていることを知って欲しかった。せめて私のいないところでやってほしかった。

当時はお母さんが怖くて、何に対して自分が悲しかったのか説明することができなかった。
でも、ご近所付き合いが、自分たち家族があの場所で過ごしやすくするために大切なことで、お母さんがそれにとても一生懸命だったことは、大人になった今ならわかるから。恨んだり、今更謝ってほしいとかは思わない。
だけど、だけどね。あと時、私はとても悲しかったんだよ。その時の私の気持ちは“ダメ”ではないよね。